自己破産の裁判所費用は、弁護士費用とは別に、裁判所へ納める申立手数料、予納郵券、官報公告費、管財人予納金などで構成されます。同時廃止で進む場合は数万円程度で収まることが多い一方、管財事件になると破産管財人の費用として20万円以上の予納金が必要になることがあります。
もっとも、予納金の金額は全国一律ではありません。申立てをする裁判所、同時廃止か管財事件か、弁護士が代理人として申し立てるか本人申立てか、事案の規模や調査の必要性によって変わります。古い費用表を前提にすると準備額が足りなくなることがあるため、申立時点の裁判所運用を確認することが重要です。
- 裁判所費用は、弁護士費用とは別に準備する必要がある
- 同時廃止は、収入印紙・郵券・官報公告費を中心に数万円程度が目安
- 管財事件では、管財人予納金として20万円以上が必要になることが多い
- 予納金は裁判所・事件類型・本人申立てかどうかで変わる
- 費用不足を理由に財産を隠したり、一部だけ返済したりするのは避ける
坂尾陽弁護士
2009年 京都大学法学部卒業
2011年 京都大学法科大学院修了
2011年 司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~ アイシア法律事務所開業

自己破産の裁判所費用・予納金の全体像
自己破産の費用を確認するときは、まず法律事務所へ支払う弁護士費用と、裁判所へ納める費用を分けて考えます。この記事で扱うのは、主に裁判所へ納める費用です。
裁判所費用は、一般に次のような項目に分かれます。
| 項目 | 意味 | 金額の目安 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 申立手数料 | 申立書に収入印紙を貼って納める手数料 | 個人の自己破産では1,500円程度 | 裁判所の費用表で確認します。 |
| 予納郵券 | 裁判所から債権者等へ書類を送るための郵便切手 | 数千円程度 | 債権者数や裁判所運用で変わることがあります。 |
| 官報公告費 | 破産手続開始決定や免責許可決定などを官報に掲載する費用 | 同時廃止では1万円台程度が多い | 「同時廃止の予納金」として案内されることがあります。 |
| 管財人予納金 | 破産管財人の報酬・手続費用に充てるための予納金 | 20万円以上になることが多い | 管財事件になると大きな負担になります。 |
東京地方裁判所民事第20部の令和8年1月1日現在の破産事件の手続費用一覧では、個人自己破産及び免責申立ての申立手数料は1,500円、自己破産申立ての予納郵券は4,950円、同時廃止事件の予納金基準額は13,046円とされています。また、個人管財事件では最低20万円に加えて、個人1件につき20,397円が必要とされています。
上記は東京地方裁判所民事第20部の令和8年1月1日現在の案内を前提にした例です。実際の金額は、申立先の裁判所、納付方法、事件内容、改定時期によって変わるため、申立時点の案内を確認してください。
自己破産の総額を確認したい場合は、裁判所費用だけでなく、弁護士費用や法テラスの利用可否もあわせて整理する必要があります。全体像は自己破産の費用相場、弁護士費用の内訳は自己破産の弁護士費用も参考にしてください。
裁判所費用の内訳
裁判所費用は、ひとまとめに「予納金」と呼ばれることがあります。しかし、実際には、収入印紙、郵便切手、官報公告費、管財人予納金を分けて理解した方が、見積もりを誤りにくくなります。
申立手数料・収入印紙
申立手数料は、破産手続開始と免責許可を求める申立てのために裁判所へ納める手数料です。通常は、申立書に収入印紙を貼る方法で納めます。東京地裁の上記費用表では、個人自己破産及び免責申立ては1,500円とされています。
金額だけを見ると大きくありませんが、申立手数料は裁判所に申立てをするための基本費用です。弁護士費用の見積書に「実費込み」と書かれている場合でも、収入印紙代が含まれるのか、別途精算なのかを確認しておきましょう。
予納郵券
予納郵券は、裁判所が債権者や申立人へ書類を送るために、事前に納める郵便切手です。東京地裁の上記費用表では、自己破産申立ての予納郵券は4,950円とされています。
予納郵券は、裁判所ごとに内訳が指定されることがあります。たとえば、500円切手を何枚、110円切手を何枚という形で案内されることがあります。古い郵便料金や別の裁判所の内訳をそのまま使うと、不足や差替えが生じることがあるため注意が必要です。
官報公告費
官報公告費は、破産手続開始決定や免責許可決定などを官報に公告するための費用です。同時廃止事件では、破産管財人が選ばれないため、裁判所費用の中心はこの官報公告費と申立手数料・予納郵券になります。
東京地裁の費用表では、同時廃止事件の予納金基準額が13,046円とされています。中目黒庁舎で現金納付する場合は14,000円とされています。これは「同時廃止の予納金」と表現されることがありますが、管財人予納金とは性質が異なります。
「予納金」という言葉だけで判断すると、同時廃止の官報公告費等と、管財事件の管財人予納金を混同しやすくなります。どの費用を指しているのかを必ず確認しましょう。
管財人予納金・引継予納金
管財事件では、裁判所が破産管財人を選任します。破産管財人は、財産調査、換価、債権者対応、免責調査などを行うため、その報酬や手続費用に充てるための予納金が必要になります。
弁護士が代理人として申し立てる個人の管財事件では、東京地裁の場合、最低20万円の管財人予納金が目安になります。さらに、個人1件につき20,397円の費用が必要とされています。本人申立ての管財事件や、負債総額が大きい事件、調査・換価が複雑な事件では、これより高額になることがあります。
管財事件に該当するかは、財産の有無だけでなく、浪費・ギャンブル・投資損失、偏った返済、個人事業、会社代表者、財産の処分、債権者数、説明の必要性などを総合して判断されます。管財事件の全体像は自己破産の管財事件で詳しく解説しています。
同時廃止の場合の裁判所費用はいくらか
同時廃止は、破産手続開始と同時に破産手続が終了する比較的簡易な類型です。破産管財人が選任されないため、管財人予納金が発生せず、裁判所費用は低くなりやすいです。
東京地裁の令和8年1月1日現在の費用表を前提にすると、個人自己破産の同時廃止では、申立手数料1,500円、予納郵券4,950円、同時廃止事件の予納金13,046円を合計して、1万9,496円が一つの目安になります。現金納付の扱いなどにより端数が変わる場合があります。
| 費用項目 | 東京地裁の例 | 説明 |
|---|---|---|
| 申立手数料 | 1,500円 | 個人自己破産及び免責申立ての印紙代です。 |
| 予納郵券 | 4,950円 | 自己破産申立ての郵便切手です。 |
| 同時廃止予納金 | 13,046円 | 官報公告費等に充てられる費用です。 |
| 合計 | 1万9,496円 | 弁護士費用は別に必要です。 |
ただし、同時廃止にできるかどうかは、費用を安くしたいという希望だけで決まるものではありません。処分すべき財産がないか、免責について追加調査が必要ないか、申立書や資料の説明が十分かなどを裁判所が確認します。
同時廃止の条件、期間、管財事件との違いは、自己破産の同時廃止の記事で詳しく解説しています。
管財事件・少額管財の場合の予納金はいくらか
管財事件では、同時廃止と比べて裁判所費用が大きく増えます。特に重要なのが、破産管財人の費用に充てる予納金です。
東京地裁の令和8年1月1日現在の費用表を前提に、弁護士が代理人として個人自己破産を申し立てる管財事件を考えると、最低20万円に加えて個人1件につき20,397円が必要です。これに申立手数料1,500円と予納郵券4,950円を加えると、合計は22万円台になります。
| 事件類型 | 裁判所費用の目安 | ポイント |
|---|---|---|
| 同時廃止 | 2万円前後 | 破産管財人が選ばれないため、費用負担は比較的小さいです。 |
| 弁護士申立ての個人管財事件 | 22万円台以上 | 最低20万円の管財人予納金が大きな部分を占めます。 |
| 本人申立ての管財事件 | 50万円以上になることがある | 裁判所の費用表上、本人申立事件では負債総額に応じた高い基準が示されることがあります。 |
| 法人・代表者・事業者の破産 | 個別判断 | 法人、代表者、事業用資産、従業員、税金、売掛金などで高額化しやすいです。 |
少額管財は、通常の管財事件に比べて予納金を抑えた運用として説明されることがあります。ただし、少額管財を利用できるかどうか、いくらで進められるかは裁判所の運用と事件内容によります。東京地裁の少額管財の特徴は、自己破産の少額管財で確認できます。
管財事件になると予納金以外の負担も増える
管財事件では、予納金だけでなく、資料提出、管財人面談、郵送や連絡、債権者集会への出席、財産の説明などの負担も増えます。弁護士費用も、同時廃止より管財事件の方が高くなる傾向があります。
そのため、費用を見積もるときは、裁判所費用だけを見て判断するのではなく、弁護士費用、裁判所費用、申立てまでの積立期間、管財人対応の追加費用を含めて確認することが大切です。
予納金はいつ払うのか
裁判所費用をいつ準備するかは、申立て方法や事件類型によって変わります。一般的には、収入印紙や予納郵券は申立時に準備し、同時廃止の予納金や管財人予納金も、申立てから開始決定までの段階で準備を求められます。
弁護士に依頼する場合、法律事務所が申立て前に裁判所費用を預かり、必要なタイミングで納付する運用が多いです。管財事件が見込まれる場合は、申立てまでに20万円以上を積み立ててから提出することもあります。
| 費用 | 準備時期の目安 | 遅れた場合の影響 |
|---|---|---|
| 申立手数料・予納郵券 | 申立時まで | 提出書類の補正や追加納付が必要になることがあります。 |
| 同時廃止の予納金 | 申立時又は裁判所の指定時期 | 手続の進行が遅れる可能性があります。 |
| 管財人予納金 | 申立て前後から開始決定まで | 管財事件として進める準備が整わず、申立ての時期に影響します。 |
予納金を用意できないまま無理に申立てると、補正、納付指示、申立ての遅れなどにつながることがあります。いつまでにいくら必要かを、依頼前の見積もり段階で確認しましょう。
裁判所への出頭、面接、債権者集会の有無も、事件類型によって変わります。裁判所対応が不安な方は、自己破産で裁判所に行く回数も参考にしてください。
予納金が払えないときの対処法
予納金が払えない場合でも、すぐに自己破産を諦める必要はありません。弁護士費用の分割・積立、法テラス、親族からの援助、申立時期の調整などを組み合わせて準備できる場合があります。
- 弁護士費用と裁判所費用を分けて積み立てる:毎月いくらを弁護士費用に充て、いくらを予納金として残すかを決めます。
- 受任通知後の返済停止を踏まえて計画する:弁護士に依頼すると、債権者への返済を止めて費用を積み立てられることがあります。
- 法テラスの利用を検討する:収入・資産基準を満たす場合、弁護士費用等の立替制度を利用できることがあります。
- 親族援助を受ける場合は返済約束を避ける:援助の性質や返済約束の有無によって、債権者扱いや偏頗弁済の問題が生じることがあります。
- 管財事件の見込みを早めに確認する:20万円以上の予納金が必要になりそうかを早めに把握します。
費用不足への具体的な対応は、自己破産の費用が払えないときで詳しく解説しています。法テラスの利用条件や費用目安は、法テラスで自己破産する費用も参考にしてください。
新規借入れで予納金を作るのは避ける
自己破産を予定している状態で、予納金を作るために新たな借入れをすることは避けるべきです。返済できないことを分かって借りたと評価されると、免責の判断や債権者対応で問題になるおそれがあります。
家族や友人だけに返済してから申立てるのも危険
費用を準備する過程で、家族、友人、勤務先、車ローン会社など一部の債権者だけに返済すると、偏頗弁済として問題になることがあります。費用を作るためにどの支払いを止め、どの支払いを続けるかは、自己判断せず弁護士に相談してください。偏った返済のリスクは、自己破産前の偏頗弁済で解説しています。
予納金を抑えるためにやってはいけないこと
管財事件になると費用が増えるため、「財産を少なく見せれば同時廃止になるのではないか」と考えてしまう方もいます。しかし、財産隠しや名義変更は、手続上非常に危険です。
| やってはいけないこと | 問題点 | 起こり得る影響 |
|---|---|---|
| 現金や預金を隠す | 財産調査を妨げる行為と見られる | 管財事件化、免責不許可、説明負担の増加につながることがあります。 |
| 車や保険を家族名義に変える | 財産処分や否認の対象になる可能性がある | 管財人による調査・返還請求の対象になることがあります。 |
| 退職金や保険解約返戻金を申告しない | 重要な財産の申告漏れになる | 追加資料の提出、管財事件化、免責判断への影響が生じます。 |
| 債権者をあえて一覧表から外す | 債権者平等を害する | 債権者漏れ、免責後の紛争、免責判断への影響が生じます。 |
財産があるかどうかは、自己判断で「これは大した金額ではない」と決めず、資料をもとに弁護士へ説明することが大切です。財産の扱いは自己破産で残せる財産・失う財産、財産隠しや債権者漏れのリスクは自己破産で財産隠し・債権者漏れをした場合で確認できます。
裁判所費用の見積もりで確認すべきポイント
自己破産の見積もりを確認するときは、単に「自己破産費用はいくらですか」と聞くだけでは足りません。裁判所費用は、弁護士費用と別枠で発生することが多いため、次の点を確認しましょう。
- 同時廃止見込みか管財事件見込みか:予納金の差が大きいため、最初に確認します。
- 裁判所費用が見積書に含まれるか:収入印紙、郵券、官報公告費、管財人予納金を分けて確認します。
- 管財事件になった場合の追加費用:弁護士費用と管財人予納金の両方で追加負担がないか確認します。
- いつまでにいくら積み立てるか:申立時期と費用準備のスケジュールを合わせます。
- 法テラス・分割払いの利用可否:使える制度と対象外になる費用を確認します。
特に、最初の相談で「同時廃止でいけそう」と言われた場合でも、資料を確認した結果、管財事件の可能性が出てくることがあります。預金、保険、車、退職金、相続、事業、直近の財産処分、ギャンブル・投資、偏った返済などは、見積もり段階から正直に伝える必要があります。
坂尾陽弁護士
自己破産の裁判所費用・予納金に関するよくある質問
同時廃止なら裁判所費用はいくらですか?
裁判所によって異なりますが、同時廃止では収入印紙、予納郵券、官報公告費を中心に数万円程度で収まることが多いです。東京地裁の令和8年1月1日現在の費用表を前提にすると、個人自己破産の同時廃止では合計1万9,496円が一つの目安です。
管財事件になるといくら必要ですか?
弁護士が代理人として申し立てる個人の管財事件では、20万円以上の管財人予納金が必要になることが多いです。東京地裁の費用表では、最低20万円に加え、個人1件につき20,397円が必要とされています。申立手数料や予納郵券も別に必要です。
予納金は分割払いできますか?
裁判所に納める予納金は、弁護士費用のように長期分割で後払いできるとは限りません。実務上は、弁護士に依頼した後、申立てまでに毎月積み立て、予納金が準備できた段階で申立てることが多いです。裁判所がどこまで待つかは事案により異なるため、早めに確認が必要です。
法テラスを使えば予納金も払ってもらえますか?
法テラスは、主に弁護士費用等の立替制度です。裁判所費用や管財人予納金の扱いは、地域、生活保護の有無、援助決定の内容、追加支出の審査などによって異なります。法テラスを利用する場合でも、予納金がいつ、いくら必要になるかを別に確認しましょう。
家族に予納金を出してもらってもよいですか?
家族から援助を受けること自体が直ちに禁止されるわけではありません。ただし、返済約束をした借入れなのか、返済不要の援助なのか、家族が債権者なのかによって扱いが変わります。家族からの援助を使う場合は、後でトラブルにならないよう、事前に弁護士へ伝えてください。
予納金が払えないと自己破産できませんか?
管財事件で必要な予納金を用意できないと、申立てのタイミングや手続の進行に影響します。ただし、費用積立、法テラス、親族援助、申立時期の調整などで準備できる場合があります。お金がないからと放置せず、早めに相談することが重要です。
まとめ
自己破産の裁判所費用は、同時廃止か管財事件かで大きく変わります。同時廃止では数万円程度で収まることが多い一方、管財事件では20万円以上の管財人予納金が必要になることがあります。
- 裁判所費用は、収入印紙、予納郵券、官報公告費、管財人予納金に分けて確認する
- 東京地裁の令和8年1月1日現在の例では、同時廃止は合計1万9,496円が目安
- 個人管財事件では、最低20万円に加えて官報公告費等が必要になる
- 金額は裁判所や事件内容で変わるため、申立時点の案内を確認する
- 予納金が不安な場合は、分割・積立・法テラス・援助の使い方を早めに相談する
裁判所費用は、自己破産を進めるうえで避けて通れない費用です。特に管財事件の可能性がある場合、予納金をどう準備するかを早めに決めることで、申立ての遅れや追加トラブルを防ぎやすくなります。
坂尾陽弁護士
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