自己破産をしても、勤務先から受け取る給料が当然に全額差し押さえられるわけではありません。自己破産で処分対象になるかは、給料やボーナスが「破産手続開始決定の前に発生したものか」「開始決定後の労働の対価か」「すでに口座へ入金されているか」によって変わります。
特に、すでに給与差押えを受けている場合は、受任通知や申立てだけで必ず止まるとは限りません。実務上は、破産手続開始決定、同時廃止か管財事件か、執行裁判所への上申、免責許可決定の確定などを分けて考える必要があります。
- 自己破産をしても、開始決定後に働いて得る給料・ボーナスは原則として自分で受け取れる
- 開始決定前に発生して未払いの給料・賞与は、差押可能部分だけが問題になることがある
- すでに口座へ入った給料は「給料」ではなく預金として扱われる
- 既存の給与差押えは、開始決定後に中止又は失効するが、実務上の連絡・上申が必要になることがある
- 税金・養育費・婚姻費用などは、免責後も別途差押えリスクが残ることがある
坂尾陽弁護士
2009年 京都大学法学部卒業
2011年 京都大学法科大学院修了
2011年 司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~ アイシア法律事務所開業

自己破産で給料は差し押さえられる?まず結論
自己破産では、破産法上、原則として破産手続開始時に持っている財産が破産財団になります。反対に、破産手続開始決定の後に働いて得る給料やボーナスは、通常「新得財産」として破産者が生活再建のために使える財産です。
そのため、「自己破産をしたら毎月の給料が全部取られる」という理解は誤りです。問題になるのは、開始決定時点ですでに発生していた未払給与、開始前に入金済みの預金、すでに債権者から受けている給与差押え、税金や養育費などの非免責債権・滞納処分です。
| 給料・ボーナスの状態 | 自己破産での基本的な扱い | 注意点 |
|---|---|---|
| 開始決定後に働いて発生する給料 | 原則として全額受け取れる | 新得財産。通常の生活費、家賃、公共料金などに使える |
| 開始決定後に支給されるボーナス | 開始後の労働・評価に対応する部分は原則受け取れる | 算定期間が開始前にかかる場合は、発生時期の説明が必要になることがある |
| 開始決定前に発生済みで未払いの給料 | 差押可能部分が問題になることがある | 月例給与・賞与は、手取りの4分の1又は33万円超の部分が目安 |
| 開始決定前に口座へ入金済みの給料 | 預金又は現金として扱う | 給与名目でも、入金後は口座残高・現金として申告する |
| すでに給与差押えを受けている | 開始決定後に中止又は失効する可能性がある | 同時廃止と管財事件で処理が異なる。執行裁判所への対応が必要 |
| 税金・養育費などの差押え | 免責で当然に消えるとは限らない | 非免責債権や滞納処分として別途整理が必要 |
「受任通知を送れば給与差押えが止まる」と誤解されることがあります。受任通知には督促を止める実務上の効果はありますが、すでに裁判所で始まった給与差押えを当然に消す手続ではありません。
給料が守られる理由
給料は生活費を支える収入です。強制執行の場面でも、民事執行法により賃金の一定部分は差押えが禁止されます。厚生労働省の労働条件Q&Aでも、賃金の4分の3は差押禁止で、月例賃金が44万円を超える場合には差押禁止額が33万円になる旨が説明されています。
破産手続でも、差押禁止財産は原則として破産財団から外れます。そのため、開始決定時に未払給与がある場合でも、給与全額が当然に処分対象になるのではなく、差押可能部分だけが問題になります。
自己破産で給料を失うより、放置して差押えを受ける方が危険なことがある
借金を滞納したままにすると、債権者が判決や支払督促などを取得し、勤務先を第三債務者として給与差押えを申し立てることがあります。給与差押えが始まると、勤務先に差押命令が届き、手取りの一部を受け取れなくなります。
自己破産を検討している場合は、給与差押えが始まる前に、受任通知、申立書類の準備、開始決定までの見通しを立てることが重要です。すでに訴状、支払督促、差押命令が届いている場合は、通常より急いで対応する必要があります。
給料・ボーナスの扱いは開始決定の前後で変わる
給料とボーナスは、破産手続開始決定の前後で扱いが大きく変わります。弁護士へ依頼した日や、裁判所へ申立てをした日ではなく、裁判所が破産手続開始決定を出した時点を基準に整理するのが基本です。
開始決定後に働いて得た給料は新得財産
破産手続開始決定後に、勤務を続けて発生する給料は、新得財産として扱われます。新得財産は、破産財団に組み入れて債権者へ配当する財産ではなく、破産者が生活再建のために使える財産です。
たとえば、開始決定後の勤務に対応する翌月給与、開始決定後に再就職して得る給与、開始決定後の副業収入などは、原則として自分で受け取れます。ただし、事業収入や高額な臨時収入は、売掛金の発生時期や財産評価が問題になることがあるため、給与明細、業務委託契約、入金履歴を整理しておきましょう。
開始決定前に発生した未払給与は一部が問題になる
開始決定時点で、すでに働いた分の給料が発生しているものの、まだ勤務先から支払われていない場合、その未払給与債権は開始時点の財産として確認されます。もっとも、給料には差押禁止部分があるため、実務上問題になるのは差押可能部分です。
月例給与や賞与については、手取り額を基準に、原則として4分の3が差押禁止となります。また、民事執行法施行令上、差押禁止額は33万円を上限として考えるため、手取り額が大きい場合は33万円を超える部分が差押可能部分になります。
| 手取り額 | 差押可能部分の目安 | 考え方 |
|---|---|---|
| 30万円 | 7万5,000円 | 30万円の4分の1 |
| 44万円 | 11万円 | 44万円から差押禁止額33万円を差し引く |
| 60万円 | 27万円 | 4分の1の15万円より、33万円超部分の27万円が大きい |
| 80万円の賞与 | 47万円 | 賞与でも33万円超部分が問題になることがある |
上記は開始決定時に「未払いの給与・賞与」がある場合の考え方です。すでに口座に入金されている場合は、給与債権ではなく預金残高として扱われるため、同じ計算をそのまま使うわけではありません。
入金済みの給料は預金・現金として扱う
給料日後に給与口座へ入金されたお金は、破産手続上は給与債権ではなく預金として扱われます。開始決定時に口座残高として残っていれば、預金の財産評価、自由財産拡張、口座凍結・相殺の問題になります。
預金と現金の扱いは、自己破産で現金・預金をいくら残せるかという問題に直結します。給与口座が借入先銀行にある場合は、受任通知後に口座凍結や相殺を受けるおそれがあるため、給与振込口座の変更も検討します。
ボーナスは支給日だけでなく算定期間も確認する
ボーナスは、支給日が開始決定後であっても、算定期間の大部分が開始決定前に対応していることがあります。そのため、管財事件では、賞与の支給規程、算定期間、勤務評価の時期、支給確定時期を確認されることがあります。
もっとも、開始決定後に支給されたボーナスが常に全額処分対象になるわけではありません。開始前に権利として確定していたか、金額がどの程度確実だったか、生活費として必要か、他の財産と合わせて自由財産拡張が必要かを個別に整理します。
すでに給与差押えを受けている場合の停止時期
給与差押えを受けている場合、自己破産の目的は借金を免責して生活を立て直すことだけでなく、差押えで削られている生活費を回復することにもあります。ただし、給与差押えが止まる時期は、受任通知、申立て、開始決定、免責確定を分けて考える必要があります。
受任通知だけでは裁判所の差押命令は消えない
弁護士が債権者へ受任通知を送ると、多くの貸金業者からの督促や直接請求は止まります。しかし、すでに裁判所の差押命令が出ている場合、受任通知を送っただけで差押命令の効力が当然に消えるわけではありません。
最高裁平成24年10月19日判決は、弁護士が債権者一般に債務整理開始通知を送った行為が、破産法上の「支払の停止」に当たると判断した事案です。これは受任通知が破産手続上重要な意味を持ち得ることを示すものですが、給与差押えを止めるには、別途、破産手続開始決定や執行裁判所への上申などの実務対応が必要です。
管財事件では開始決定後に差押えが失効するのが基本
管財事件では、破産手続開始決定により、破産債権に基づく強制執行は破産財団との関係で効力を失うのが基本です。給与差押えについても、破産管財人や代理人が執行裁判所へ開始決定を上申し、勤務先への取扱いを整理する流れになります。
ただし、勤務先や執行裁判所が破産開始決定を自動的に把握するとは限りません。差押えが続いているように見える場合は、開始決定正本・上申書・取下げ書類・供託の有無などを確認し、弁護士を通じて手続状況を整理します。
同時廃止では開始決定後に中止し、免責確定で失効する流れがある
同時廃止の場合は、開始決定と同時に破産手続が廃止されるため、管財人が選任されません。この場合、破産法249条により、免責許可申立てがあり、同時廃止決定がされたときは、すでにされている強制執行等が中止し、免責許可決定の確定により効力を失うという流れがあります。
同時廃止では、差押えが「中止」されている期間に、勤務先が差押部分を供託したり、支払を保留したりすることがあります。そのため、開始決定が出た直後から必ず満額が手元に戻るとは限らず、免責確定後に供託金の還付などの手続が必要になることがあります。
| 手続類型 | 給与差押えの基本的な扱い | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 管財事件 | 開始決定後、差押えは失効する方向で整理される | 管財人・代理人が執行裁判所へ上申し、勤務先の処理を確認する |
| 同時廃止 | 開始決定後に中止し、免責確定で効力を失う流れがある | 中止期間中の供託・保留分は、免責確定後の手続を確認する |
| 債権者が任意に取下げ | 取下げにより差押えが終了する | 取下書の提出時期、勤務先への通知、未処理分の返還を確認する |
| 税金・養育費等 | 免責で当然に消えないことがある | 破産債権と非免責債権・滞納処分を分けて対応する |
差押命令・訴状・支払督促が届いたら資料を急いで集める
給与差押えは、判決、仮執行宣言付支払督促、公正証書などをもとに進むことが多いです。差押命令が勤務先に届くと、会社に借金問題が知られる可能性が高くなります。
まだ差押え前でも、訴状や支払督促が届いている場合は、放置しないでください。自己破産の申立てを急ぐ必要があるか、答弁書・異議申立て・分割交渉で時間を確保すべきか、事案によって対応が変わります。必要書類は自己破産の必要書類一覧を参考に早めに準備しましょう。
給与口座・勤務先・会社にばれるリスク
給料そのものが守られるとしても、給与口座や勤務先との関係で注意すべき点があります。自己破産では、勤務先に裁判所から当然に通知されるのが原則ではありませんが、給与差押え、社内貸付、退職金証明書、給与口座の凍結があると、勤務先に事情を説明せざるを得ない場面があります。
借入先銀行の給与口座は凍結・相殺に注意する
給与振込口座の銀行からカードローン、クレジットカード、住宅ローンなどを借りている場合、受任通知後に口座凍結や預金相殺が起きることがあります。給与が入金された直後に口座が凍結されると、生活費を引き出せないおそれがあります。
このリスクがある場合は、弁護士に相談したうえで、給与振込口座を借入れのない銀行へ変更することを検討します。もっとも、直前に多額の現金を引き出して使途を説明できない状態にすると、財産隠しや使途不明金を疑われることがあります。口座変更・引出し・生活費支出は、通帳や領収書で説明できるようにしてください。
自己破産だけで勤務先に通知されるとは限らない
会社員が自己破産をしても、通常の貸金業者やクレジットカード会社から勤務先へ直接通知されるわけではありません。裁判所から勤務先へ当然に連絡が行くのが通常でもありません。
ただし、すでに給与差押えを受けている場合は、差押命令が勤務先に届くため、勤務先に知られる可能性が高いです。また、勤務先から借入れをしている、社内貸付がある、給料の前借りがある、会社に債権者として記載すべき債務がある場合は、会社が債権者として手続に関与することがあります。勤務先への影響は自己破産は会社にばれるかもあわせて確認してください。
公務員・金融機関・警備業などは職種別の確認も必要
給与差押えの問題とは別に、職種によっては自己破産中の資格制限、共済貸付、職場の規程が問題になることがあります。公務員の場合は共済組合貸付、退職手当、職場への照会方法を確認する必要があります。
また、生命保険募集人、警備業、宅地建物取引士など、破産手続中の資格制限が問題になる職種もあります。給料が守られるかだけでなく、勤務先の制度、職種上の制限、社内貸付の有無をまとめて確認しましょう。
給料・ボーナスを受け取るときにやってはいけないこと
給料やボーナスは生活費に使うための大切な収入ですが、自己破産を予定している時期には、使い方や記録が重要になります。通常の生活費に使うことは問題になりにくい一方で、特定の債権者だけへ返済したり、家族名義へ移したり、現金化して使途を説明できなくしたりすると、手続上のリスクが生じます。
生活費・家賃・医療費・通勤費に使うのは通常問題になりにくい
開始決定後の給料は、家賃、食費、水道光熱費、通信費、医療費、通勤費、子どもの学費など、通常の生活費に使えます。弁護士費用や裁判所費用の積立についても、家計収支を見ながら計画的に進めることがあります。
ただし、高額な買い物、浪費、ギャンブル、説明できない現金支出があると、家計管理や免責の判断に影響することがあります。給与明細、賞与明細、家計簿、領収書を残し、申立前後の収入と支出を説明できるようにしましょう。
特定の債権者だけに返済しない
給料日やボーナス支給日に、家族、友人、勤務先、車ローン会社、クレジットカード会社など特定の債権者だけへ返済すると、偏頗弁済として問題になることがあります。
自己破産では、債権者を公平に扱うことが重要です。給与差押えで生活が苦しいからといって、任意に一部債権者だけへ返済したり、新たな借入れで支払ったりするのは避けてください。すでに支払ってしまった場合は、隠さず弁護士へ伝え、時期、金額、相手、理由を整理します。
家族名義口座への移動やタンス預金化は避ける
給与やボーナスを家族名義の口座へ移す、現金で引き出して保管する、電子マネーや暗号資産に替えるなどの行動は、財産隠しを疑われる原因になります。実際に生活費として使う予定でも、記録が残らない形にすると説明が難しくなります。
破産管財人や裁判所は、通帳、給与明細、源泉徴収票、税務資料、家計収支表などを確認します。財産や債権者の漏れがある場合は、財産隠し・債権者漏れのリスクが大きくなるため、早めに訂正することが大切です。
税金・養育費・婚姻費用などは給料差押えが残ることがある
自己破産によって免責許可決定が確定すると、多くの借金について法的な支払責任は免除されます。しかし、すべての請求が消えるわけではありません。税金、社会保険料、養育費、婚姻費用、一定の損害賠償、罰金などは、免責されない債権として残ることがあります。
税金・社会保険料は免責されない
住民税、所得税、国民健康保険料、国民年金保険料などは、自己破産をしても原則として免責されません。滞納が続くと、給与、預金、売掛金などに対して滞納処分を受けることがあります。
税金の差押えは、一般の貸金業者の給与差押えとは手続が異なります。自己破産と並行して、自治体や税務署へ分納、猶予、現在の生活状況の説明を行う必要があります。詳しくは自己破産しても税金は免除されない場合の対応を確認してください。
養育費・婚姻費用は免責後も支払いが残ることがある
養育費や婚姻費用など、親族関係に基づく扶養義務に関する請求は、非免責債権として残ることがあります。滞納分がある場合、免責後も給与差押えを受ける可能性があります。
また、養育費等の差押えでは、通常の貸金債権より差押可能範囲が広くなることがあります。借金の自己破産と、養育費・婚姻費用の支払いは別に整理し、家庭裁判所での減額調停などが必要かも検討します。
非免責債権と免責不許可は別問題
税金や養育費があるからといって、自己破産の申立て自体ができないわけではありません。非免責債権が残る問題と、免責が許可されるかどうかは別問題です。
ただし、免責されない債権が大きい場合は、免責後の家計をどう立て直すかが重要になります。非免責債権の種類は、自己破産で免責されない借金で整理しています。
給料・ボーナスに関する必要書類
給料やボーナスの扱いを正確に判断するには、収入資料と口座資料が必要です。差押えを受けている場合は、執行関係資料も重要になります。資料が不足すると、開始決定時点の財産、未払給与、口座入金、差押えの状況を正しく説明できません。
- 給与明細:直近2〜3か月分だけでなく、裁判所運用に応じて一定期間分が必要になることがあります。
- 賞与明細:ボーナス支給額、控除額、支給日、算定期間を確認します。
- 源泉徴収票:年間収入、勤務先、扶養状況を確認するために使います。
- 通帳・入出金明細:給与入金口座、口座凍結、相殺、現金引出し、生活費支出を確認します。
- 差押命令・訴状・支払督促:給与差押えの有無、債権者、執行裁判所、第三債務者を確認します。
- 雇用契約書・就業規則:給与締日、支給日、賞与規程、退職金制度を確認することがあります。
勤務先から退職金証明書や給与関係資料を取る必要がある場合でも、自己破産という理由をそのまま伝えずに取得できることがあります。退職金の扱いは自己破産で退職金はどうなるかも確認してください。
給与差押えがあるときは執行裁判所と勤務先の資料が重要
給与差押えがある場合、勤務先に届いた差押命令、陳述書、供託書、債権者からの取下書、執行裁判所の事件番号などが重要になります。これらが分かれば、自己破産開始決定後にどの裁判所へ何を提出すべきか整理しやすくなります。
勤務先へ自分で説明する前に、弁護士へ資料を見せてください。説明の仕方を誤ると、会社に必要以上の事情を伝えてしまったり、差押えの中止・失効手続が遅れたりすることがあります。
自己破産と給料・ボーナスのよくある質問
自己破産をすると毎月の給料は減りますか?
自己破産をしただけで、勤務先が給料を減額するわけではありません。破産手続開始決定後に働いて発生する給料は、原則として全額受け取れます。ただし、すでに給与差押えを受けている場合は、中止・失効の手続が完了するまで差押部分が供託・保留されることがあります。
ボーナス支給月に自己破産を申し立てても大丈夫ですか?
大丈夫な場合もありますが、支給日、算定期間、開始決定日、すでに支給が確定していたかによって扱いが変わります。開始決定前に発生済みの賞与は一部が財産として問題になることがあります。ボーナスを生活費や申立費用に使う場合は、使途を説明できるように資料を残してください。
給与差押えは自己破産の申立てをした日から止まりますか?
申立てをしただけで当然に止まるとは限りません。一般には、破産手続開始決定後に、管財事件では失効、同時廃止では中止から免責確定後の失効という流れを検討します。執行裁判所へ開始決定を知らせる上申などが必要になることがあります。
受任通知を送れば勤務先にばれませんか?
受任通知は通常、債権者に送るものであり、勤務先へ送るものではありません。そのため、受任通知だけで勤務先に知られるとは限りません。ただし、すでに給与差押えがある場合や勤務先が債権者である場合は、勤務先に知られる可能性があります。
給与口座は変更した方がよいですか?
給与口座の銀行に借入れがある場合は、口座凍結や相殺のリスクがあるため、変更を検討することがあります。変更の要否は、借入先、給与日、受任通知の時期、生活費の残高によって変わります。勝手に大きな資金移動をする前に、弁護士へ相談してください。
税金や養育費の差押えも自己破産で止まりますか?
税金や養育費は、一般の借金と同じように免責されるとは限りません。税金は免責されず、滞納処分が続くことがあります。養育費や婚姻費用も非免責債権として残ることがあります。自己破産の手続と並行して、分納、猶予、減額調停など別の対応を検討します。
副業収入や業務委託報酬も給料と同じ扱いですか?
会社員の給料と、個人事業主・業務委託の売上や報酬は扱いが異なることがあります。売掛金の発生時期、経費、未収入金、事業用口座、在庫や備品の評価が問題になる場合があります。副業やフリーランス収入がある場合は、請求書、契約書、入金明細、経費資料を整理しましょう。
まとめ|給料差押えは開始決定前後と手続類型で整理する
自己破産をしても、開始決定後に働いて得る給料やボーナスは、原則として生活再建のために受け取れます。給料が問題になるのは、開始決定時点で未払いの給与・賞与がある場合、入金済みで預金として残っている場合、すでに給与差押えを受けている場合、税金や養育費など免責されない請求がある場合です。
- 自己破産で毎月の給料が当然に全額差し押さえられるわけではない
- 開始決定後の給料・ボーナスは、原則として新得財産として受け取れる
- 開始決定前に発生した未払給与・賞与は、差押可能部分が問題になることがある
- すでに口座に入った給料は預金・現金として扱われる
- 既存の給与差押えは、管財事件・同時廃止で中止又は失効の流れが異なる
- 税金・養育費などは免責後も差押えリスクが残ることがある
給料差押えを受けている場合や、給与口座が借入先銀行にある場合は、対応が遅れるほど生活費の確保が難しくなります。差押命令、給与明細、通帳、賞与明細、訴状や支払督促をそろえ、早めに手続の見通しを確認しましょう。
坂尾陽弁護士
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