自己破産の費用が払えないと感じても、すぐに申立てを諦める必要はありません。自己破産では、弁護士費用と裁判所費用を分けて準備します。弁護士費用は分割・積立を相談できることが多く、収入や資産が一定基準以下であれば法テラスを利用できる可能性もあります。
ただし、費用を作るために新たに借入れをしたり、家族・友人・車ローン会社だけに返済したり、財産を隠したりするのは危険です。費用不足のときほど、返済を続けながら一人で我慢するのではなく、どの支払いを止め、どの費用をいつまでに準備するかを早めに整理することが大切です。
- 自己破産費用は、弁護士費用と裁判所費用を分けて考える
- 弁護士費用は、分割・積立・法テラスを検討できることが多い
- 管財事件が見込まれると、予納金の準備が重要になる
- 費用を作るための新規借入れや偏った返済は避ける
- 費用不足を放置すると、訴訟・差押え・財産変動のリスクが高まる
坂尾陽弁護士
2009年 京都大学法学部卒業
2011年 京都大学法科大学院修了
2011年 司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~ アイシア法律事務所開業

自己破産の費用が払えないときは費用の種類を分ける
自己破産の費用が払えないときに最初にするべきことは、必要な費用をひとまとめにせず、弁護士費用と裁判所費用に分けることです。どちらの費用が足りないのかによって、取れる対策が変わります。
| 費用の種類 | 主な内容 | 払えないときの主な対策 |
|---|---|---|
| 弁護士費用 | 相談料、着手金、報酬金、実費、事務手数料など | 分割払い、毎月の積立、法テラス、無料相談での見積もり確認 |
| 裁判所費用 | 申立手数料、予納郵券、官報公告費、管財人予納金など | 申立前の積立、親族援助、法テラス利用時の扱い確認、申立時期の調整 |
| 生活再建費用 | 家賃、食費、医療費、転居費、通勤費など | 家計の見直し、必要支出の優先、生活保護や公的支援の検討 |
弁護士費用は、法律事務所ごとの料金体系や分割条件によって調整できる余地があります。一方、裁判所に納める予納金は、弁護士費用と同じように長期の後払いができるとは限りません。特に管財事件が見込まれる場合は、申立ての前後でまとまった予納金が必要になることがあります。
一般的な費用相場を先に確認したい場合は、自己破産の費用相場も参考にしてください。弁護士費用だけを詳しく知りたい場合は、自己破産の弁護士費用で内訳を整理しています。
弁護士費用が払えない場合は分割・積立を相談する
自己破産を弁護士に依頼する方の多くは、最初からまとまった費用を用意できるわけではありません。弁護士に依頼すると、貸金業者等への受任通知により、取立てや直接連絡が止まり、これまで返済に回していたお金を弁護士費用の積立に充てられることがあります。
- 毎月の分割払い:契約後、毎月一定額を支払い、費用が準備できた段階で申立てに進む方法です。
- 返済停止後の積立:債権者への返済を止め、その分を弁護士費用や裁判所費用に充てる方法です。
- 初回相談・見積もりの無料利用:依頼前に、総額、毎月の積立額、申立時期を確認します。
- 法テラスの検討:収入・資産の条件を満たす場合、弁護士費用等の立替制度を利用できる可能性があります。
「後払い」と書かれている場合でも、完全に費用を払わないまま最後まで手続を進められるという意味ではないことがあります。実際には、申立て前に毎月積み立て、必要額が準備できた段階で申立てる運用が多いです。分割回数、毎月の支払額、申立てまでの目安期間、途中で支払えなくなった場合の扱いを確認しましょう。
アイシア法律事務所では、自己破産の法律相談・見積もりを無料で行っています。手元資金が不安な場合でも、分割払いの可否や申立てまでの積立計画を相談できます。
ただし、積立期間が長くなるほど、債権者から訴訟を起こされたり、給与差押えを受けたり、財産状況が変わったりするリスクがあります。毎月の積立額を低くしすぎると、申立てが先延ばしになり、結果的に不利になることもあるため注意が必要です。
法テラスを使える場合は費用負担を抑えられることがある
収入や資産が一定基準以下の方は、法テラスの民事法律扶助を利用できる可能性があります。法テラスの立替制度では、弁護士・司法書士費用等を法テラスが立て替え、利用者は原則として分割で返済します。
法テラス公式の案内では、立替制度を利用するには、収入や資産が一定基準以下であること、勝訴の見込みがないとはいえないこと、民事法律扶助の趣旨に適することの3つの条件が必要とされています。自己破産では、免責の見込みがあるか、制度の趣旨に合う申立てかが審査で問題になります。詳しい条件は法テラスの立替制度の利用条件を確認してください。
| 債権者数 | 着手金 | 実費 | 合計目安 |
|---|---|---|---|
| 1〜10社 | 132,000円 | 23,000円 | 155,000円 |
| 11〜20社 | 154,000円 | 23,000円 | 177,000円 |
| 21社以上 | 187,000円 | 23,000円 | 210,000円 |
上の金額は、法テラス公式の自己破産事件費用の目安です。実際の費用は事件の内容や審査によって決まり、必ずこの金額になるとは限りません。法テラスの自己破産費用を詳しく確認したい場合は、法テラスの自己破産費用の目安と、当サイトの法テラスで自己破産する費用をご覧ください。
法テラスを使えば、自己破産が必ず無料になるわけではありません。生活保護受給中でも、立替金の償還免除は自動ではなく、事件終了後の申請・審査が必要です。
審査では、住民票、収入資料、資産資料、事件内容を確認する資料、返済口座に関する資料などが求められます。必要書類は状況によって変わるため、早めに準備しましょう。詳しくは法テラスの審査に必要な書類を確認してください。
裁判所費用・予納金が払えない場合の考え方
裁判所費用が払えないときは、同時廃止で進められる見込みなのか、管財事件になる可能性があるのかを確認することが重要です。同時廃止であれば裁判所費用は比較的少額で済むことが多い一方、管財事件では破産管財人の報酬・事務費に充てる予納金が必要になります。
東京地裁民事第20部の令和8年1月1日現在の費用表では、個人自己破産及び免責申立ての申立手数料は1,500円、自己破産申立ての予納郵券は4,950円、同時廃止事件の予納金基準額は13,046円とされています。また、個人管財事件では最低20万円に加えて、個人1件につき20,397円が必要とされています。最新の金額は東京地裁民事第20部の破産事件の手続費用一覧を確認してください。
- 同時廃止見込みの場合:弁護士費用の積立とあわせて、申立手数料・郵券・官報公告費等を準備します。
- 管財事件見込みの場合:弁護士費用とは別に、20万円以上の予納金をいつまでに準備するかを確認します。
- 本人申立ての場合:弁護士費用は不要でも、通常管財の予納金が高額になる可能性があります。
- 予納金が不足する場合:申立時期の調整、親族援助、法テラス利用時の扱いを確認します。
予納金は、弁護士費用のように自由に長期分割できるとは限りません。実務上は、弁護士に依頼した後、申立てまでに毎月積み立て、予納金が準備できた段階で申立てることが多くなります。裁判所費用・予納金の内訳は、自己破産の裁判所費用・予納金で詳しく解説しています。
管財事件になるかどうかは、財産の有無だけでなく、浪費・ギャンブル・投資、偏った返済、財産処分、事業の有無などでも変わります。費用を見積もる段階で、事情を隠さず伝えることが大切です。
生活保護・無職・収入が少ない場合の費用対策
生活保護受給中、無職、年金生活、ひとり親世帯などで収入が少ない場合は、法テラスの利用可能性を優先して確認します。収入が少ないこと自体は、自己破産ができない理由にはなりません。むしろ、返済原資がなく支払不能が明らかになりやすいケースもあります。
生活保護を受けている場合、法テラスの償還猶予や償還免除の申請が問題になります。ただし、生活保護を受けていれば必ず無料になるわけではなく、事件終了後の経済状況や事件の結果得た経済的利益などを踏まえて判断されます。償還免除については、法テラスの償還免除申請Q&Aも確認してください。
| 状況 | 確認すべきこと | 関連する対策 |
|---|---|---|
| 生活保護受給中 | 法テラス利用、償還猶予・免除申請、管財費用の扱い | 生活保護に詳しい弁護士へ早めに相談する |
| 無職・休職中 | 収入見込み、家計、就労可能性、法テラスの資力基準 | 費用積立額を現実的に設定する |
| 年金受給中 | 年金額、預金残高、医療・介護費、扶養状況 | 生活費を削りすぎない返済停止・積立計画を作る |
| ひとり親・扶養家族あり | 家賃、教育費、医療費、同居家族の収入 | 法テラス審査資料を早めに準備する |
生活保護受給者の自己破産については、生活保護受給者は自己破産できるかでも詳しく説明しています。
親族援助を受けるときの注意点
自己破産の費用を親族に出してもらうこと自体が、直ちに禁止されるわけではありません。親族が「返済しなくてよい援助」として費用を出してくれる場合、費用準備の現実的な方法になることがあります。
もっとも、親族からお金を受け取る場合は、援助なのか借入れなのか、返済約束があるのか、どの口座から支払ったのかを説明できるようにしておく必要があります。
- 返済不要の援助:贈与又は生活援助として説明できるよう、資金の流れを記録します。
- 返済約束のある借入れ:親族も債権者になる可能性があるため、債権者一覧への記載が必要です。
- 親族への返済を優先した場合:偏頗弁済として問題になる可能性があります。
- 親族名義の口座を使った場合:実質的に誰のお金か、財産隠しではないかを説明する必要があります。
家族に迷惑をかけたくないという理由で、家族から借りたお金だけ先に返すと、後で問題が大きくなることがあります。親族援助を使う場合は、支払前に弁護士へ相談し、返済約束や資金移動の記録方法を確認しましょう。
費用を作るためにやってはいけないこと
自己破産の費用が足りないときでも、費用を作るために何をしてもよいわけではありません。特に、自己破産を予定している状態で新たな借入れをしたり、一部の債権者だけに返済したりすると、免責や管財人調査で問題になることがあります。
| 避けるべき行動 | 問題点 | 代わりに検討すること |
|---|---|---|
| 新規借入れで費用を作る | 返済できないことを分かって借りたと疑われる可能性があります。 | 分割・積立・法テラス・親族援助を相談します。 |
| クレジットカード現金化 | 換金行為や詐欺的利用として問題になる可能性があります。 | カードを使わず、弁護士に費用不足を伝えます。 |
| 家族・友人だけに返済する | 偏頗弁済として、管財人から問題視されることがあります。 | 返済を止める範囲を弁護士に確認します。 |
| 車ローンだけ払い続ける | 担保・所有権留保・偏頗弁済の問題が絡みます。 | 車を残せるか、契約書・車検証を確認します。 |
| 財産を隠す・名義変更する | 財産隠し、否認、免責不許可の問題につながります。 | 資料を出して、自由財産拡張などを検討します。 |
最高裁平成24年10月19日判決は、弁護士が債権者一般に債務整理開始通知を送付した行為について、破産法上の「支払の停止」に当たると判断した事案です。受任通知後や費用積立中の返済は、時期や相手によって問題になりやすいため、自己判断で一部だけ返済しないようにしましょう。
「費用を貯めるためだから大丈夫」と考えて、一部の債権者へ返済したり、財産を動かしたりするのは危険です。偏った返済のリスクは自己破産前の偏頗弁済、財産隠しのリスクは自己破産で財産隠し・債権者漏れをした場合で確認してください。
費用の積立中に注意すべきリスク
弁護士費用を分割で積み立てる場合、申立てまでに数か月かかることがあります。その間、返済が止まることで家計は楽になる一方、放置してよい期間ではありません。必要書類を集め、家計を整え、財産や債権者の変動を把握する期間として使うことが大切です。
- 訴訟・支払督促:一部の債権者が裁判手続を進めることがあります。届いた書類はすぐに弁護士へ共有します。
- 給与差押え:申立てが遅れると、給与差押えが先に進むことがあります。差押えの不安がある場合は早めに伝えます。
- 財産の変動:ボーナス、退職金、保険解約返戻金、相続、車の売却などがあると、事件類型が変わることがあります。
- 家計の乱れ:返済が止まった後に浪費が増えると、免責判断で問題になることがあります。
申立てまでの期間が長くなりそうな場合は、自己破産の期間や流れも確認しておくと安心です。手続全体の流れは自己破産の流れ、申立てから免責までの期間は自己破産の期間で整理しています。
本人申立てで費用を抑えるかは慎重に判断する
弁護士費用が払えない場合、「自分で申し立てれば安く済むのではないか」と考える方もいます。本人申立てでは弁護士費用はかかりませんが、書類作成、債権者対応、裁判所対応、管財事件になった場合の予納金準備を自分で行う必要があります。
また、弁護士代理人がいない本人申立てでは、裁判所の運用や事案によって、管財事件として高額な予納金が必要になることがあります。費用を抑えるつもりが、結果的に申立てが遅れたり、予納金負担が重くなったりする可能性もあります。
本人申立てを検討する場合は、弁護士費用だけでなく、裁判所費用、必要書類、手続負担、管財事件になる可能性を比較しましょう。詳しくは自己破産は自分でできるかをご覧ください。
相談前に準備しておくと費用見積もりが正確になる資料
費用が払えないときこそ、最初の相談で事情を正確に伝えることが重要です。資料が不足していると、同時廃止で進められるのか、管財事件になるのか、予納金がいくら必要かの見通しがずれやすくなります。
- 借入先一覧:貸金業者、銀行、クレジットカード、家族・友人、勤務先、個人間借入れを含めます。
- 収入資料:給与明細、源泉徴収票、年金通知、生活保護受給証明、事業収支資料などです。
- 家計資料:家賃、食費、医療費、教育費、保険料、スマホ代、公共料金などを整理します。
- 財産資料:預金通帳、保険証券、車検証、退職金見込額、持ち家資料、証券口座資料などです。
- 直近の返済・借入れ資料:いつ、誰に、いくら支払ったか、借りたかを説明できるようにします。
財産の有無が費用に影響することもあります。車、保険、退職金、預金、持ち家などがある場合は、費用だけでなく財産の扱いもあわせて確認しましょう。財産全体の考え方は、自己破産で残せる財産・失う財産で解説しています。
ケース別に見る費用が払えないときの進め方
費用不足の対処法は、生活状況や事件類型によって変わります。以下の表を参考に、自分に近いケースで何を優先するべきか確認しましょう。
| ケース | 優先して確認すること | 注意点 |
|---|---|---|
| 毎月返済だけで生活費が足りない | 受任通知後の返済停止と弁護士費用の積立 | 返済を続けて費用を貯めようとすると、申立てが遅れます。 |
| 収入が少なく法テラスを使いたい | 資力基準、必要書類、対応弁護士、審査期間 | 審査に時間がかかるため、早めに相談します。 |
| 管財事件になりそう | 予納金の金額、積立期間、親族援助の可否 | 20万円以上の予納金を見込む必要があります。 |
| 家族に費用を出してもらう | 援助か借入れか、返済約束の有無、資金の流れ | 家族への返済を優先すると偏頗弁済が問題になります。 |
| すでに訴訟・差押えが不安 | 申立てを急ぐ必要性、積立期間の短縮、裁判対応 | 費用積立を長くしすぎると、手続前に差押えが進むことがあります。 |
自己破産の費用が払えない場合によくある質問
お金がなくても自己破産できますか?
お金がない状態でも、弁護士費用の分割・積立、法テラス、親族援助、申立時期の調整によって、自己破産を進められる場合があります。ただし、完全に無料で必ずできるわけではなく、裁判所費用や予納金が必要になることがあります。
弁護士費用は後払いできますか?
法律事務所によって扱いは異なります。自己破産では、契約後に毎月積み立て、費用が一定額に達した段階で申立てる分割・積立方式が多く使われます。完全な後払いを当然に利用できるわけではないため、契約前に支払時期と途中で払えない場合の扱いを確認しましょう。
予納金を分割払いできますか?
裁判所に納める予納金は、弁護士費用のように長期分割で後払いできるとは限りません。管財事件が見込まれる場合は、申立て前から毎月積み立て、予納金が準備できた段階で申立てることが多いです。地域や事件内容によって運用が異なるため、早めに確認してください。
法テラスを使えば自己破産費用は無料になりますか?
法テラスは、弁護士・司法書士費用等を立て替える制度であり、原則として利用者が分割で返済します。生活保護受給中などで償還猶予・免除が問題になる場合でも、自動的に無料になるわけではありません。申請や審査が必要です。
家族に費用を出してもらってもよいですか?
家族から返済不要の援助を受けること自体が、直ちに禁止されるわけではありません。ただし、借入れなのか贈与なのか、返済予定があるのか、資金の流れを説明できるようにしておく必要があります。家族に返済する約束をした場合、家族も債権者になる可能性があります。
費用を作るために借り入れてもよいですか?
自己破産を予定している状態で、新たな借入れやクレジットカード利用によって費用を作ることは避けるべきです。返済できないことを分かって借りたと疑われたり、免責の判断で問題になったりする可能性があります。費用が足りない場合は、新規借入れではなく、分割・積立・法テラスなどを検討してください。
まとめ
自己破産の費用が払えないときは、費用不足を理由に諦めるのではなく、弁護士費用と裁判所費用を分けて準備方法を考えることが大切です。弁護士費用は分割・積立・法テラスを検討できる一方、管財事件の予納金はまとまった準備が必要になることがあります。
- 弁護士費用は、分割・積立・無料見積もりを確認する
- 法テラスは、収入・資産などの条件と審査がある
- 予納金は、同時廃止か管財事件かで負担が大きく変わる
- 親族援助を受けるときは、返済約束や資金の流れを整理する
- 新規借入れ、カード現金化、偏った返済、財産隠しは避ける
費用がない状態で一人で返済を続けると、申立てが遅れ、訴訟や差押え、偏頗弁済、財産変動のリスクが高まることがあります。借金額、収入、財産、毎月の返済額を整理し、早めに弁護士へ相談して現実的な費用計画を立てましょう。
坂尾陽弁護士
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