自己破産の債権者一覧表は、金融会社、カード会社、銀行だけでなく、家族・友人、勤務先、家賃、公共料金、税金、保証債務、債権譲渡後の債権者など、支払義務のある相手を漏れなく整理するための書類です。債権者一覧表に漏れや誤りがあると、裁判所からの通知、債権調査、免責判断、手続の進行に影響することがあります。
- 債権者一覧表には、借入先・未払先・保証債務など、支払義務のある相手を原則としてすべて記載します。
- 家族や友人からの借金も、恥ずかしい、迷惑をかけたくないという理由で外してはいけません。
- 債権者名、住所、残高、借入時期、使途、最終返済日、保証人・担保の有無などを、資料と照合して書きます。
- 債権譲渡、代位弁済、債権回収会社への委託がある場合は、現在の債権者と元の債権者の関係を整理します。
- 提出後に漏れや誤りに気付いたら、放置せず、弁護士を通じて速やかに訂正・追加します。
坂尾陽弁護士
2009年 京都大学法学部卒業
2011年 京都大学法科大学院修了
2011年 司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~ アイシア法律事務所開業

自己破産の債権者一覧表とは全債権者を裁判所に知らせる書類です
自己破産の債権者一覧表とは、自己破産を申し立てる人が、誰に、いくら、どのような原因で支払義務を負っているのかを裁判所へ示す書類です。裁判所は、債権者一覧表をもとに、知れている債権者への通知、負債の全体像の確認、同時廃止か管財事件かの見通し、免責判断に関係する事情の確認を進めます。
債権者一覧表に書くべき相手は、消費者金融やカード会社だけではありません。家族、友人、勤務先、保証会社、債権回収会社、滞納家賃、公共料金、携帯端末代、税金、養育費、損害賠償など、支払義務がある相手は幅広く確認する必要があります。
| 役割 | 債権者一覧表で確認されること | 漏れた場合の主なリスク |
|---|---|---|
| 裁判所への説明 | 負債総額、債権者数、借入れの原因、支払不能に至った経緯を把握します。 | 補正、追加資料、申立て準備のやり直しにつながることがあります。 |
| 債権者への通知 | 破産手続開始決定や免責に関する通知を送る前提になります。 | 債権者が手続に参加する機会を失うおそれがあります。 |
| 債権調査 | 残高、利息、遅延損害金、債権譲渡、代位弁済などを確認します。 | 債権者や残高の把握が遅れ、手続が長引くことがあります。 |
| 免責判断 | 一部債権者を隠していないか、偏った返済がないかを確認します。 | 悪質な漏れや虚偽説明は免責判断に影響することがあります。 |
| 免責の効力 | 免責許可決定がどの債権に及ぶかを判断する基礎になります。 | 知りながら記載しなかった債権について、免責の効力が問題になることがあります。 |
自己破産の必要書類全体を先に確認したい場合は、自己破産の必要書類一覧も参考にしてください。債権者一覧表は、陳述書や家計収支表とも内容がつながるため、自己破産の陳述書の書き方、自己破産の家計簿の書き方とあわせて整合性を確認することが大切です。
債権者一覧表は、裁判所へ提出する形式的なリストではなく、債権者に手続参加の機会を与え、免責の対象を整理するための重要な書類です。税金や養育費など免責されない可能性がある債務も、裁判所書式に従って漏れなく申告する必要があります。
債権者一覧表に記載する主な債権者・債務
債権者一覧表を作るときは、「借金」という言葉から思い浮かぶ相手だけで判断しないことが重要です。ローン、カード、保証債務、未払金、滞納金、立替金、損害賠償など、名称が違っても支払義務があるものは確認対象になります。
| 区分 | 記載対象になりやすいもの | 確認資料の例 |
|---|---|---|
| 消費者金融・銀行 | カードローン、フリーローン、銀行借入れ、住宅ローン、教育ローン | 契約書、督促状、残高証明、通帳、アプリ、信用情報 |
| クレジットカード | ショッピング、キャッシング、リボ払い、分割払い、未払手数料 | 利用明細、会員サイト、請求書、カード会社の回答書 |
| ローン・分割払い | 車、スマートフォン端末、家電、医療ローン、エステ、教材 | 契約書、支払予定表、督促状、販売店・信販会社の資料 |
| 家族・友人・知人 | 生活費の借入れ、立替金、個人間の貸し借り、親族からの援助が返済約束付きだったもの | 借用書、メッセージ、振込履歴、通帳、本人メモ |
| 勤務先・取引先 | 給料前借り、社内貸付、立替経費、個人事業の買掛金・外注費 | 給与明細、社内書類、請求書、取引明細、メール |
| 賃貸・公共料金 | 滞納家賃、原状回復費、電気・ガス・水道・通信料金、携帯料金 | 賃貸借契約書、管理会社の請求書、公共料金の督促状 |
| 公租公課 | 税金、国民健康保険料、国民年金保険料、住民税、固定資産税など | 納税通知書、督促状、役所からの書類、滞納明細 |
| 保証債務 | 誰かの借金の保証人・連帯保証人になっている場合の保証債務 | 保証契約書、金融機関からの通知、主債務者の資料 |
| 債権譲渡・代位弁済 | 保証会社、債権回収会社、代位弁済後の求償債権 | 債権譲渡通知、代位弁済通知、債権回収会社からの通知 |
| 損害賠償・養育費等 | 交通事故の損害賠償、慰謝料、養育費、婚姻費用、罰金等 | 判決、和解書、調停調書、公正証書、請求書 |
裁判所によっては、税金や社会保険料を債権者一覧表とは別の「滞納公租公課一覧表」などに記載する運用があります。どの欄に書くかは申立先裁判所の書式に従いますが、「免責されない可能性があるから書かなくてよい」ということにはなりません。免責されない借金の詳細は、自己破産しても免責されない借金も確認してください。
債権者一覧表を書く前に集める資料
債権者一覧表は、記憶だけで作ると漏れが起きやすい書類です。特に、昔のカード、完済したと思っていた債務、債権譲渡された債務、家族からの立替金、保証債務は見落としやすいため、先に資料を集めてから一覧化します。
郵便物・督促状・請求書を集める
まず、手元に届いている督促状、請求書、残高通知、債権譲渡通知、代位弁済通知、裁判所からの支払督促や訴状を集めます。封筒に記載された住所、債権者名、債権回収会社名、事件番号、連絡先も確認します。
債権者名が似ている会社や、合併・社名変更・債権譲渡で名称が変わっている会社もあります。古い請求書と新しい請求書の両方がある場合は、どの債権が同じものかを弁護士に確認してから記載すると安全です。
通帳・カード明細・アプリを確認する
通帳には、返済先、引落し先、借入れ入金、保証会社からの引落し、家賃・公共料金の滞納状況が残っていることがあります。ネット銀行やスマホ決済、クレジットカードアプリ、後払いアプリも確認してください。
カードを解約していても、会員サイトにログインできる場合があります。ログインできない場合は、カード会社や債権者に残高照会をする、過去のメールを探す、信用情報を取得するなどの方法を検討します。
信用情報を取り寄せる
消費者金融、カード会社、銀行、信販会社の借入れは、信用情報機関の開示で確認できることがあります。信用情報だけで全債権者が分かるわけではありませんが、忘れていたカード、保証会社、異動情報、残債務の手がかりになります。
ただし、税金、家族・友人からの借金、勤務先の貸付、家賃、個人間の立替金、裁判上の損害賠償などは信用情報に出ないことがあります。信用情報を取ったから安心というわけではなく、通帳、郵便物、家族とのメモ、訴訟資料もあわせて確認します。
家族・友人・勤務先への借金メモを作る
家族や友人からの借金は、契約書や督促状がないことが多いため、本人の記憶と通帳、メッセージ、振込履歴で整理します。いつ、誰から、いくら借りたか、返済約束があったか、これまでいくら返したか、今後返す約束が残っているかをメモにしてください。
勤務先からの貸付、給料前借り、社内立替えも確認が必要です。自己破産で勤務先に知られるか不安な場合でも、勤務先に対する支払義務そのものを隠してよいことにはなりません。勤務先への影響は個別事情で変わるため、早めに弁護士へ相談してください。
債権者一覧表の基本的な書き方
債権者一覧表の書式は裁判所ごとに異なりますが、基本的には、債権者名、住所、借入れや契約の時期、原因・使途、現在額、最終返済日、保証人・担保の有無、備考などを記載します。申立先裁判所の書式に合わせ、分からない欄は空欄で放置せず、調査状況や不明理由を説明できるようにします。
| 項目 | 書く内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 番号 | 債権者ごとに通し番号を付けます。 | 同じ債権者に複数債務がある場合、枝番で整理することがあります。 |
| 債権者名 | 正式な会社名・個人名を書きます。 | 旧社名、債権譲渡、保証会社、債権回収会社の関係を確認します。 |
| 住所・送達先 | 請求書、通知書、債権管理センター、本社等の住所を書きます。 | 個人債権者は住所が必要になるため、分からない場合は調査します。 |
| 借入時期・取引期間 | 最初の借入れ、契約、購入、最後の借入れや利用時期を記載します。 | 月日まで不明な場合でも、年・月の範囲で分かる限り記載します。 |
| 原因・使途 | 生活費、債務返済、事業資金、車、住宅、保証、滞納などを記載します。 | 陳述書の借金の経緯と矛盾しないようにします。 |
| 現在額 | 申立時点の元金、利息、遅延損害金等の合計額を記載します。 | 残高が不明な場合は、残高調査中、不明理由、確認資料を整理します。 |
| 最終返済日 | 最後に返済した日、又は一度も返済していない旨を記載します。 | 通帳、領収書、アプリ、債権者回答書で確認します。 |
| 保証人・担保 | 保証人、連帯保証人、抵当権、所有権留保、差押えなどを記載します。 | 保証人への影響や車・住宅の扱いに関係します。 |
| 備考 | 債権譲渡、代位弁済、訴訟、差押え、資料不足の理由などを記載します。 | 書式に欄がない場合は、上申書や別紙で補足することがあります。 |
正式名称と住所は請求書や通知書で確認する
債権者名は、通称やブランド名ではなく、できる限り正式な会社名で記載します。クレジットカードの券面にあるブランド名と、実際の契約会社名が異なることもあります。債権譲渡後は、現在の債権者、原債権者、債権回収会社のいずれをどの欄に書くかを確認します。
住所は、債権者へ裁判所から通知を送るためにも重要です。督促状に「債権管理センター」や「法務部」などの送付先が書かれている場合は、その住所を確認します。分からない場合でも、何も書かずに提出するのではなく、本社所在地、請求書記載住所、調査中であることを弁護士に共有してください。
借入時期は古い順に整理する
多くの裁判所書式では、取引や借入れを開始した時期の古い順に記載することが求められます。同じ債権者から何度も借入れやカード利用をしている場合は、債権者ごとにまとめるか、枝番で分けるかを弁護士や裁判所書式に合わせて整理します。
借入時期は、陳述書の「借金が増えた経緯」とも関係します。たとえば、生活費の不足、失業、病気、離婚、事業不振、他社返済のための借入れなど、いつ何が原因で借金が増えたのかを説明できるようにしておくと、陳述書との整合性を保ちやすくなります。
原因・使途は具体的に書く
原因・使途欄には、「生活費」「債務返済」「事業資金」「車のローン」「住宅ローン」「医療費」「教育費」「ギャンブル」「保証債務」「家賃滞納」など、借金や未払金が発生した理由を書きます。分からないからといって、すべて「生活費」とまとめると、実際の資料や陳述書と合わなくなることがあります。
浪費、ギャンブル、投資、換金行為など、免責不許可事由に関係し得る事情がある場合も、隠さず弁護士へ伝えてください。債権者一覧表だけで詳細な反省文を書く必要はありませんが、原因・使途の説明が不自然だと、後で追加説明を求められることがあります。
現在額は元金だけでなく利息・遅延損害金も確認する
現在額には、申立時点で支払義務がある金額を記載します。金融会社やカード会社から回答書が届いている場合は、その金額をもとにします。利息、遅延損害金、手数料が加算されていることもあるため、元金だけを書いてしまわないよう注意してください。
ただし、残高が確定していない段階で申立準備を進めることもあります。その場合は、概算、調査中、債権者回答待ちなど、どの程度確認できているかを分けて管理します。弁護士に依頼している場合は、弁護士が債権調査を行い、回答書に基づいて一覧表へ反映するのが通常です。
保証人・担保・差押えの有無も書く
保証人や連帯保証人がいる債務は、本人が自己破産しても保証人の責任が当然に消えるわけではありません。そのため、債権者一覧表には保証人の有無を正確に記載し、保証人へどのような請求が行く可能性があるかを事前に検討します。保証人への影響は、自己破産すると保証人・連帯保証人はどうなるかで詳しく確認できます。
住宅ローンの抵当権、自動車ローンの所有権留保、給料差押え、預金差押え、訴訟・支払督促がある場合も、備考欄や別紙で整理します。財産や差押えの状況は管財事件への振り分けにも関係することがあるため、自己破産の管財事件もあわせて確認してください。
家族や友人からの借金も債権者一覧表に書く
自己破産では、家族や友人からの借金も債権者一覧表に記載します。「迷惑をかけたくない」「知られたくない」「少額だからよい」と考えて外すと、手続上の債権者漏れになります。親族・友人だけを特別扱いして返済することも、他の債権者との公平を害する問題になり得ます。
親族・友人への借金を外してよいわけではない
親、兄弟姉妹、配偶者、元配偶者、友人、知人、職場の同僚など、個人から借りたお金も、返済約束があるなら債務です。借用書がなくても、口約束で返済する予定だった、振込履歴がある、メッセージで返済時期を話しているといった事情があれば、債権者として整理する必要があります。
一方で、返済不要の贈与だったのか、貸付だったのかが曖昧な場合もあります。この場合は、本人だけで判断せず、やり取りの内容、相手の認識、これまでの返済状況を弁護士に伝え、一覧表へ記載すべきかを確認してください。
借用書がない場合は根拠をメモする
個人間の借金では、契約書や残高証明がないことがよくあります。その場合は、いつ、誰から、どの方法で、いくら受け取ったか、いくら返したか、現在いくら残っていると考えているかをメモにします。振込履歴、LINEやメール、手帳、家計簿、通帳の現金入金・出金記録も手がかりになります。
金額が正確に分からない場合でも、空欄で放置するより、分かる範囲で概算を出し、不明な理由を説明できるようにします。相手に確認できる場合は確認しますが、連絡方法やタイミングによってはトラブルになることもあるため、弁護士に相談してから進めると安心です。
家族や友人だけに先に返すのは避ける
自己破産を考えている段階で、家族や友人にだけ先に返済すると、偏頗弁済として問題になることがあります。偏頗弁済とは、支払不能の状態で一部の債権者だけを優先して返済することをいいます。家族や友人に迷惑をかけたくない気持ちがあっても、自己判断で返済を続けると、かえって手続が複雑になることがあります。
受任通知後や申立て前後の返済は、債権者一覧表、通帳、家計簿で確認されます。家族・友人への返済がある場合は、隠さず説明してください。詳しくは自己破産前に一部の債権者だけ返済するリスクも確認しておきましょう。
保証債務・債権譲渡・代位弁済がある場合の書き方
債権者一覧表で漏れやすいのが、保証債務、債権譲渡、代位弁済、債権回収会社が関係する債務です。現在請求している相手だけを見て書くと、元の借入先、借入時期、使途、保証関係が分からなくなることがあります。
自分が誰かの保証人になっている場合
自分が家族、友人、会社、奨学金、住宅ローンなどの保証人・連帯保証人になっている場合、その保証債務も確認します。主債務者がまだ支払っている段階で、保証人に現実の請求が来ていない場合でも、将来請求される可能性がある債務として整理が必要になることがあります。
保証債務を記載する場合は、誰のどの債務を保証しているのか、債権者は誰か、現在の残高はいくらか、保証契約書や通知書があるかを確認します。保証債務の扱いは個別性が高いため、主債務者への影響、保証人自身の破産、求償権の有無を含めて弁護士に相談してください。
債権譲渡された場合は現在の債権者と元の債権者を整理する
長期間滞納している債務では、元の金融会社やカード会社から、債権回収会社、保証会社、別の会社へ債権が移っていることがあります。この場合、現在請求している会社だけでなく、元の債権者、債権譲渡日、譲渡通知、借入時期、使途を整理します。
たとえば、最初はカード会社から借りた債務でも、その後に債権回収会社から督促が来ている場合があります。債権者一覧表では、裁判所書式に合わせて、現在の債権者、原債権者、受託会社、送達先を記載します。どの欄に書くか迷う場合は、債権譲渡通知や督促状を弁護士に見せて確認してください。
代位弁済があった場合は保証会社・保証協会も確認する
代位弁済とは、保証会社や保証協会などが、本人に代わって金融機関へ支払うことです。代位弁済後は、保証会社や保証協会から本人に対する求償債権が発生します。銀行ローン、奨学金、事業資金、信用保証協会付き融資などで問題になりやすい論点です。
代位弁済がある場合は、現在の債権者、元の金融機関、代位弁済日、元の借入時期、残高を確認します。借入時期を代位弁済日だけで書くと、借入れの原因や経緯が分かりにくくなるため、元の契約内容もあわせて整理することが重要です。
金額や住所が分からない場合の対応
債権者一覧表では、すべてを最初から完璧に把握できないこともあります。古い債務、書類を紛失した債務、債権譲渡された債務、個人間の借金では、残高や住所が分からないことがあります。その場合でも、分からないことを理由に外すのではなく、調査した内容と不明な理由を整理します。
不明な債務を外さない
残高が分からない債務や住所が不明な債権者でも、支払義務がある可能性を認識しているなら、弁護士に伝える必要があります。外してしまうと、後で債権者漏れとして問題になることがあります。
「金額不明」「住所調査中」「債権者回答待ち」「古い借入で資料なし」など、状況を整理しておけば、弁護士が債権調査、上申書、補足説明などで対応しやすくなります。記憶が曖昧な場合も、いつ頃、どの会社、どのような借入れだったかをメモにしてください。
住所が分からない場合は資料から調査する
会社の住所は、請求書、督促状、ウェブサイト、債権譲渡通知、本社所在地、債権管理センターの住所から確認できることがあります。個人債権者の場合は、住所が分からないと裁判所から通知できないため、分かる範囲で調査します。
ただし、個人債権者へ連絡することでトラブルが生じる可能性がある場合、自己判断で強く問い合わせる前に弁護士に相談してください。住所が分からない事情や、過去の連絡先、関係性、最後に連絡した時期を説明できるようにしておくとよいでしょう。
時効かもしれない古い借金も相談する
古い借金について、「もう時効だと思うから書かない」と自己判断するのは危険です。時効が完成している可能性がある債務でも、訴訟、支払督促、債務承認、返済、差押えなどにより時効の判断が変わることがあります。
時効の可能性がある債務は、債権者一覧表にどう記載するか、異議の留保や備考でどう扱うか、弁護士に確認してください。時効かどうかを判断する前に債権者へ不用意に連絡すると、対応を誤ることもあります。
債権者漏れに気付いたときはすぐ訂正・追加する
債権者一覧表を提出した後で、漏れや誤りに気付くことがあります。債権譲渡通知が届いた、保証会社が代位弁済した、家族への借金を思い出した、古いカードの督促が届いたといった場合です。このようなときは、放置せず、できるだけ早く弁護士に連絡します。
申立て前なら一覧表を修正する
裁判所へ申立てをする前に漏れが分かった場合は、債権者一覧表を修正します。新しい債権者、住所、残高、資料、漏れていた理由を整理し、陳述書や家計簿、財産資料との整合性も確認します。
弁護士に依頼している場合、債権者一覧表は弁護士が申立書類全体と合わせて整えることが多いため、思い出した時点で早めに伝えることが大切です。小さな金額でも、家族や友人でも、迷ったら伝えてください。
申立て後から免責前なら追加上申・訂正を検討する
申立て後に債権者が漏れていたことが分かった場合は、債権者追加上申書、債権者変更上申書、訂正した債権者一覧表などを提出する運用があります。具体的な手続や期限は裁判所によって異なるため、申立先の裁判所と弁護士の指示に従います。
重要なのは、漏れを知った後に放置しないことです。裁判所や管財人が自動的に見つけてくれるとは限りません。新しい督促状、債権譲渡通知、代位弁済通知、個人債権者からの連絡が届いたら、すぐに資料を共有してください。
宇都宮地裁令和3年5月13日判決は、破産申立代理人が、債権者の変動等により提出済みの債権者一覧表に誤りが生じたことを知った場合、訂正した債権者一覧表を提出するなどして、正確な債権者の氏名や債権内容を裁判所へ報告する義務を負うと判断しました。申立て後に漏れや変更を知った場合は、「後で何とかなる」と考えず、早期に報告・訂正することが重要です。
免責後に漏れが発覚した場合は免責の効力を確認する
免責許可決定が確定した後に債権者漏れが分かった場合、その債権について免責の効力が及ぶかが問題になることがあります。破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権は、免責の効力が及ばない可能性があります。ただし、単純な記憶違い、債権者が破産手続開始を知っていた場合、債務の性質などにより判断が変わるため、個別確認が必要です。
債権者漏れの免責・罰則・訂正の詳しい影響は、自己破産で財産隠し・債権者漏れをするとどうなるかで解説しています。この記事では、まず債権者一覧表を作成する段階で漏れを防ぐことを重視してください。
債権者一覧表とほかの書類の整合性を確認する
債権者一覧表は、ほかの申立書類と独立して存在するものではありません。陳述書、家計収支表、財産目録、通帳、給与明細、カード明細、督促状と照合し、説明が食い違っていないかを確認します。
| 確認する書類 | 債権者一覧表とのチェックポイント | 不整合の例 |
|---|---|---|
| 通帳 | 返済先、引落し、借入入金、家族への返済、公共料金滞納を確認します。 | 通帳に返済先があるのに一覧表に記載がない。 |
| 家計収支表 | 毎月の返済、滞納、家族への支払い、家賃・通信費の未払を確認します。 | 家計簿に返済があるのに債権者一覧表に載っていない。 |
| 陳述書 | 借金の原因・時期・債務増加の流れと一致しているか確認します。 | 陳述書で友人から借りたと書いたのに一覧表にない。 |
| 財産目録 | 車、住宅、保険、差押え、担保付き債務との関係を確認します。 | 車のローンがあるのに所有権留保や債権者の記載がない。 |
| 督促状・訴訟資料 | 債権者名、残高、住所、事件番号、判決・支払督促を確認します。 | 裁判所書類がある債権を一覧表に入れていない。 |
| 信用情報 | カード・ローン・保証会社の漏れを確認します。 | 信用情報に残債務があるのに申告していない。 |
矛盾があるからといって、すぐに自己破産ができなくなるわけではありません。大切なのは、矛盾を見つけた時点で修正し、なぜ違っていたのかを説明できるようにすることです。虚偽の説明や隠す対応を続けることが、最も危険です。
債権者一覧表作成時のチェックリスト
債権者一覧表を提出する前に、次の点を確認してください。すべてを一度で完璧にする必要はありませんが、分からない項目を「不明」「調査中」として整理し、弁護士に共有することが重要です。
- 金融会社、銀行、カード会社、信販会社、ローン会社をすべて確認したか。
- 家族、友人、勤務先、知人からの借金や立替金を確認したか。
- 税金、国民健康保険料、年金、家賃、公共料金、通信料金、携帯端末代の未払を確認したか。
- 保証人・連帯保証人になっている債務を確認したか。
- 債権譲渡、代位弁済、債権回収会社からの通知を確認したか。
- 債権者名と住所を、請求書や通知書に基づいて確認したか。
- 借入時期、使途、現在額、最終返済日を、分かる範囲で記載したか。
- 通帳、家計簿、陳述書、財産目録と矛盾がないか確認したか。
- 資料がない個人間の借金について、金額の根拠や不明理由をメモしたか。
- 提出後に新しい督促や通知が届いた場合、すぐ弁護士へ共有する体制にしているか。
「少額だから」「家族だから」「もう請求されていないから」「時効だと思うから」という理由だけで一覧表から外すのは避けてください。書くかどうか迷う債務は、外すのではなく、資料と一緒に弁護士へ共有するのが安全です。
債権者一覧表についてよくある質問
家族や友人からの借金も債権者一覧表に書く必要がありますか?
返済する約束がある借金であれば、家族や友人からの借金も記載します。借用書がない場合でも、振込履歴、メッセージ、これまでの返済状況、本人メモなどから整理します。迷惑をかけたくないという理由で外すことはできません。
金額が分からない債権者はどう書けばよいですか?
金額が分からない場合でも、債権者として把握しているなら弁護士に伝えます。残高証明、債権者回答、通帳、督促状、信用情報などで確認し、どうしても不明な場合は、概算や不明理由を備考欄や上申書で説明することがあります。
住所が分からない個人の債権者はどうすればよいですか?
分かる範囲で住所、連絡先、関係性、最後に連絡した時期を整理します。裁判所から通知を送るために住所が重要になるため、調査が必要です。ただし、連絡によりトラブルが起きそうな場合は、自己判断で連絡する前に弁護士へ相談してください。
税金や国民健康保険料も債権者一覧表に書きますか?
税金や国民健康保険料などは、裁判所の書式によって、債権者一覧表に書く場合と、滞納公租公課一覧表など別紙に書く場合があります。免責されない可能性がある債務でも、申告不要になるわけではありません。申立先裁判所の書式に従って整理します。
債権回収会社から請求が来ている場合は誰を債権者にしますか?
債権譲渡、回収委託、代位弁済のどれに当たるかで書き方が変わります。現在の債権者、元の債権者、受託会社、送達先を通知書で確認し、弁護士に資料を見せてください。原債権者との借入時期や使途もあわせて整理します。
奨学金や教育ローンも債権者一覧表に書きますか?
奨学金、教育ローン、保証機関からの求償債権も確認対象です。人的保証の場合は保証人への影響が、機関保証の場合は代位弁済後の求償債権が問題になることがあります。奨学金特有の注意点は、奨学金を自己破産するとどうなるかで確認してください。
申立て後に債権者漏れに気付いたらどうすればよいですか?
すぐに弁護士へ連絡し、新しい督促状、債権譲渡通知、代位弁済通知、個人債権者からの連絡内容を共有してください。裁判所へ債権者追加や変更の上申、訂正した一覧表の提出が必要になることがあります。放置すると、通知や免責の効力に影響することがあります。
時効だと思う借金も一覧表に書く必要がありますか?
時効かどうかは、最終返済日、裁判、支払督促、差押え、債務承認などで判断が変わります。時効だと思っても自己判断で外さず、資料を弁護士に見せてください。時効援用の可否と、自己破産手続での記載方法を分けて検討します。
まとめ|債権者一覧表は漏れなく正確に作成し、気付いたらすぐ訂正しましょう
自己破産の債権者一覧表は、裁判所と債権者に対して、支払義務のある相手を正確に知らせるための重要書類です。金融会社やカード会社だけでなく、家族・友人、勤務先、税金、家賃、公共料金、保証債務、債権譲渡後の債権者も確認します。
- 債権者一覧表には、支払義務のある相手を原則としてすべて記載します。
- 家族や友人からの借金、保証債務、税金、家賃、公共料金、携帯端末代も見落としやすい項目です。
- 債権譲渡や代位弁済がある場合は、現在の債権者と元の債権者の関係を整理します。
- 金額や住所が分からない場合でも外さず、調査状況や不明理由を説明できるようにします。
- 提出後に漏れや誤りへ気付いたら、できるだけ早く弁護士へ連絡し、訂正・追加を検討します。
坂尾陽弁護士
関連記事
債権者一覧表を作成する前後には、必要書類、家計簿、陳述書、債権者漏れの影響、保証人への影響もあわせて確認しておくと安心です。
