自己破産しても養育費・婚姻費用は免責されない|慰謝料との違い

自己破産をして免責許可決定が確定しても、養育費や婚姻費用の支払義務は原則としてなくなりません。カードローンやクレジットカードの借金とは違い、養育費や婚姻費用は、破産法上、免責の効力が及ばない債権として扱われるためです。

そのため、養育費を支払う側が自己破産をしても、過去の滞納分を当然に踏み倒せるわけではありません。将来発生する養育費についても、破産後の生活の中で支払い続ける必要があります。一方で、破産によって収入や家計が大きく変わった場合には、自己判断で支払いを止めるのではなく、家庭裁判所の調停・審判や相手方との協議により、減額や支払方法の見直しを検討することになります。

この記事では、自己破産と養育費・婚姻費用の関係、滞納分と将来分の違い、慰謝料・財産分与との違い、支払う側と請求する側の対応、差押えや公正証書がある場合の注意点を解説します。

  • 自己破産しても、養育費・婚姻費用は原則として免責されません。
  • 過去の滞納分も、扶養義務等に基づくものは免責の対象外として扱われます。
  • 将来発生する養育費は、破産後の生活費として支払い続ける必要があります。
  • 支払えない場合は、勝手に止めず、減額調停や支払方法の変更を検討します。
  • 慰謝料や財産分与は、養育費・婚姻費用と同じ扱いとは限りません。

坂尾陽弁護士

養育費や婚姻費用は、相手方の生活や子どもの生活を支える性質があります。破産で借金を整理する場合でも、残る支払いと減額の手続を分けて考えることが大切です。
(執筆者)弁護士 坂尾陽(Akira Sakao -attorney at law-)

2009年      京都大学法学部卒業
2011年      京都大学法科大学院修了
2011年      司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~     アイシア法律事務所開業

不倫慰謝料に詳しい坂尾陽弁護士

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自己破産しても養育費・婚姻費用は免責されない

自己破産では、破産手続開始決定だけで借金がなくなるわけではありません。免責許可決定が確定することで、破産債権について支払責任を免れるのが基本です。しかし、破産法253条は、免責許可決定が確定しても免責されない債権を定めています。これを非免責債権といいます。

養育費や婚姻費用は、家族関係に基づく扶養・生活保持の性質を持ちます。そのため、破産法253条1項4号の類型により、免責の効力が及ばない債権として扱われます。

支払いの種類 自己破産後の扱い 主な注意点
養育費 原則として免責されません。 過去の滞納分も、将来分も、別途支払い・回収・減額の問題として残ります。
婚姻費用 原則として免責されません。 離婚成立前の別居中生活費などが問題になります。離婚後の将来分は、通常、婚姻費用ではなく養育費等の問題になります。
扶養義務に基づく支払い 内容により免責されません。 親族間の扶養義務や契約に基づく類似義務が問題になることがあります。
慰謝料 当然に同じ扱いではありません。 不法行為の内容、悪意、故意・重過失、生命・身体侵害の有無などで判断します。
財産分与 養育費・婚姻費用とは性質が異なります。 清算的財産分与か扶養的要素を含むか、破産手続との前後関係などにより扱いが変わります。

したがって、自己破産を検討するときは、「借金は免責される可能性があるもの」「破産後も支払義務が残るもの」「そもそも破産後に新たに発生する生活費として扱うもの」を分ける必要があります。

MEMO

養育費や婚姻費用を債権者一覧表に記載することと、免責されることは別問題です。非免責債権であっても、破産手続上は正確に申告し、滞納額や相手方との取り決めを整理しておく必要があります。


養育費・婚姻費用が免責されない理由

養育費は、子どもを監護・教育し、生活を維持するために必要な費用です。離れて暮らす親であっても、子どもの生活を支える義務があります。自己破産は、支払不能になった人の経済的再出発を図る制度ですが、子どもの生活を支える義務まで一律に消してしまう制度ではありません。

婚姻費用は、夫婦が婚姻生活を維持するために必要な費用です。別居している場合でも、婚姻関係が続いている限り、収入や生活状況に応じて、夫婦や未成熟子の生活費を分担する義務が問題になります。

区分 根拠となる考え方 自己破産での位置づけ
養育費 子の監護に関する費用を父母が分担する義務です。 破産法上、免責の効力が及ばない非免責債権として扱われます。
婚姻費用 婚姻から生ずる生活費を夫婦が分担する義務です。 破産しても、未払い分の支払義務が残ることがあります。
扶養義務 親族間で生活を保持・扶助する義務です。 内容により、破産後も免責されない支払いとして残ります。

破産法が養育費・婚姻費用を非免責債権として扱うのは、単なる貸し借りではなく、生活を支える義務だからです。債務者本人の再出発だけでなく、子どもや配偶者側の生活保障との調整が必要になります。


滞納分と将来分は分けて考える

自己破産と養育費・婚姻費用の関係では、過去にすでに発生した滞納分と、これから発生する将来分を分けて考える必要があります。

過去の滞納分

破産手続開始前に発生している養育費や婚姻費用の滞納分は、破産手続上は債権として扱われます。しかし、扶養義務等に基づくものは非免責債権となるため、免責許可決定が確定しても支払責任は残ります。

たとえば、自己破産申立て時点で養育費の未払いが50万円ある場合、ほかの貸金業者への借金とは違い、免責許可決定後も支払義務が残る可能性が高いと考えておくべきです。

将来発生する分

破産手続開始後や免責決定後に発生する養育費は、そもそも過去の破産債権として免責されるものではありません。子どもの生活のために、破産後の家計の中で継続して支払う必要があります。

婚姻費用も、婚姻関係が続き、別居中の生活費分担が必要な限り、将来分が発生することがあります。ただし、離婚が成立した後の将来の生活費は、通常、婚姻費用ではなく、養育費、財産分与、慰謝料など別の問題として整理します。

時期 扱い 対応
破産申立て前の滞納分 破産手続上の債権ではあるが、非免責債権として残る可能性が高いです。 滞納額、公正証書、調停調書、支払履歴を整理します。
破産手続中に発生する分 現在の生活費・扶養義務として支払いが問題になります。 支払継続が難しい場合は早めに協議・調停を検討します。
免責決定後に発生する分 免責対象ではなく、通常どおり支払い義務が続きます。 破産後の家計に組み込み、滞納しない計画を立てます。

自己破産で整理できる借金が多い場合、毎月の返済負担が減ることで、養育費や婚姻費用を支払う原資を確保しやすくなることもあります。反対に、破産後の収入が大きく下がる場合は、現実的な支払額へ変更する手続を早めに検討する必要があります。


慰謝料は養育費・婚姻費用と同じ扱いではない

離婚に関するお金として、養育費、婚姻費用、慰謝料、財産分与がまとめて語られることがあります。しかし、自己破産での扱いは同じではありません。

養育費・婚姻費用は、扶養や生活保持の性質があるため、原則として免責されません。これに対し、慰謝料は、精神的苦痛に対する損害賠償です。慰謝料が自己破産で免責されるかどうかは、慰謝料の原因となった行為の内容によって判断されます。

支払い 性質 自己破産での基本的な見方
養育費 子どもの監護・教育・生活のための費用です。 原則として免責されません。
婚姻費用 婚姻中の夫婦・未成熟子の生活費です。 原則として免責されません。
離婚慰謝料 離婚原因や不法行為による精神的苦痛への賠償です。 当然に非免責とは限らず、不法行為の内容により判断します。
不貞慰謝料 不貞行為による精神的苦痛への賠償です。 破産法上の「悪意で加えた不法行為」等に当たるかが問題になります。
DV・暴行による慰謝料 生命・身体への侵害を伴う不法行為の賠償です。 故意又は重過失による生命・身体侵害として非免責が問題になりやすいです。

「慰謝料」という名前が付いているから必ず残る、又は必ず免責される、という単純な整理はできません。たとえば、不貞慰謝料、DVによる慰謝料、交通事故の損害賠償では、非免責になるかどうかの判断枠組みが異なります。詳しくは、損害賠償・慰謝料が自己破産で免責されるかを確認してください。

注意

養育費・婚姻費用は「扶養義務等」として非免責が問題になります。一方、慰謝料は「不法行為による損害賠償」として非免責になるかを判断します。名前が似ていても、根拠と判断基準が違います。


財産分与・年金分割との違い

離婚時には、養育費や慰謝料のほかに、財産分与や年金分割が問題になることがあります。これらも、自己破産での扱いは一律ではありません。

財産分与は、夫婦が婚姻中に築いた財産を清算する性質を持ちます。清算的財産分与なのか、扶養的要素があるのか、すでに具体的な金銭債権として確定しているのか、破産手続の前後どちらで問題になるのかによって扱いが変わります。

年金分割は、厚生年金の記録を分割する制度であり、単純な貸金債権や慰謝料債権とは異なります。離婚と自己破産が近い時期に重なる場合、財産分与、年金分割、養育費、婚姻費用を混同せず、それぞれの手続と期限を整理することが重要です。

項目 主な性質 自己破産との関係
養育費 子どもの生活費 原則として免責されません。
婚姻費用 婚姻中の生活費 原則として免責されません。
財産分与 夫婦財産の清算など 確定時期、内容、破産財団との関係により検討が必要です。
慰謝料 精神的苦痛の賠償 不法行為の内容により免責・非免責を判断します。
年金分割 年金記録の分割 離婚手続上、別途期限や手続を確認する必要があります。

自己破産と離婚問題が同時に進む場合は、どの請求が破産手続でどう扱われるかを整理しないまま合意書を作ると、後から回収や支払いで争いになりやすくなります。


支払う側が自己破産する場合の対応

養育費や婚姻費用を支払う側が自己破産を検討している場合でも、「破産するから養育費を払わなくてよい」とはなりません。まず、現在の取り決め、滞納額、毎月の支払額、収入、生活費を整理します。

債権者一覧表に正確に記載する

養育費や婚姻費用の滞納がある場合、元配偶者や配偶者側を債権者として整理する必要があります。非免責債権だから記載しなくてよい、ということではありません。

債権者を漏らすと、裁判所や破産管財人への説明に問題が生じることがあります。債権者漏れや財産隠しのリスクは、自己破産で財産隠し・債権者漏れをした場合も参考にしてください。

現在分の支払いは生活費として優先的に考える

子どもの生活に直結する現在分の養育費は、破産後の家計の中で優先的に考える必要があります。カードローン返済を止めて破産手続に進むことで、養育費を支払う余地が生まれることもあります。

ただし、破産直前にまとまった財産を処分して過去の滞納分だけを一括返済する場合は、破産手続上の説明が必要になることがあります。家族・親族関係の支払いは、通常の借金返済と区別が難しい場面もあるため、自己破産前の偏頗弁済のリスクを確認し、弁護士に相談してから対応しましょう。

支払えないときは減額や支払方法の見直しを検討する

失業、収入減少、病気、再婚、扶養家族の増加などにより、従前の養育費や婚姻費用を支払えなくなることがあります。この場合でも、自己判断で支払いを止めるのは危険です。滞納が積み上がり、給与や預貯金の差押えにつながることがあります。

支払能力が大きく変わった場合は、相手方との協議、養育費減額調停、婚姻費用減額調停などを検討します。破産した事実だけで自動的に減額されるわけではありませんが、収入や生活状況の変化は、見直しを求める事情になり得ます。

  • 現在の取り決めを確認する:公正証書、調停調書、審判書、合意書を確認します。
  • 滞納額を計算する:いつから、いくら未払いかを月ごとに整理します。
  • 家計を作り直す:破産後に残る税金、養育費、家賃、生活費を分けて考えます。
  • 勝手に支払いを止めない:支払えない事情を説明し、減額調停や協議を検討します。
  • 一括返済は事前に相談する:破産直前のまとまった支払いは、手続上の説明が必要になることがあります。

請求する側が相手の自己破産を知ったときの対応

養育費や婚姻費用を請求する側が、相手の自己破産を知った場合でも、直ちに請求をあきらめる必要はありません。養育費・婚姻費用は原則として免責されないため、免責許可決定が出ても支払義務は残ります。

取り決めがある場合

公正証書、調停調書、審判書、判決、離婚協議書などがある場合は、まず内容を確認します。支払額、支払日、支払期間、子どもの人数、遅延した場合の扱い、強制執行認諾文言の有無を確認してください。

債務名義がある場合は、給与や預貯金などに対する差押えを検討できることがあります。裁判所の養育費に関する手続でも、養育費等が支払われない場合に給料や銀行預金等を差し押さえる手続が案内されています。

取り決めがない場合

口頭の約束しかない、離婚時に養育費を決めていない、婚姻費用の請求をまだしていないという場合は、家庭裁判所の調停・審判を検討します。養育費の調停・審判では、父母双方の収入、子どもの人数、子どもの年齢などを踏まえ、算定表を参考に具体的な額が検討されるのが一般的です。

婚姻費用についても、別居中の夫婦間で話合いがまとまらない場合や話合いができない場合には、家庭裁判所に婚姻費用分担請求調停又は審判を申し立てることができます。調停が不成立になった場合は、審判手続に進み、裁判官が一切の事情を考慮して判断します。

令和8年4月1日施行の民法等改正にも注意する

令和8年4月1日施行の民法等改正により、養育費の支払確保に関する制度が見直されました。法務省資料では、離婚時に養育費の取決めをしていない場合でも、一定の要件のもとで暫定的な法定養育費を請求できる制度や、養育費の取決めに基づく一定額の先取特権が説明されています。

ただし、法定養育費はあくまで取決めまでの暫定的・補充的な制度です。具体的な金額や回収方法は、家庭裁判所の手続、相手方の収入、取決めの有無、証拠となる文書の有無によって変わります。詳しくは、法務省の子の養育に関するルール改正資料や、裁判所の養育費に関する手続を確認してください。

MEMO

相手が破産しても、非免責債権である養育費・婚姻費用の請求権自体が当然に消えるわけではありません。ただし、実際の回収には、債務名義、相手の勤務先・預金口座、家庭裁判所の手続などの確認が必要です。


養育費・婚姻費用の金額を見直す方法

養育費や婚姻費用は、いったん決めたら永遠に変更できないものではありません。収入、失業、病気、子どもの進学、扶養家族の増加など、事情が大きく変わった場合には、増額又は減額の協議・調停を検討できます。

ただし、変更が認められるかは、単に「破産した」「借金が多い」というだけでは決まりません。家庭裁判所では、双方の収入、生活状況、子どもの年齢や人数、必要な費用、従前の取り決めの経緯などが考慮されます。

見直しを検討する場面 支払う側の対応 請求する側の対応
失業・収入減少 収入資料を整理し、減額協議・調停を検討します。 一方的な減額に応じる前に、相手の収入資料を確認します。
再就職・収入増加 従前額の維持又は増額協議に備えます。 増額調停を検討できます。
子どもの進学・医療費増加 追加費用の負担可能性を検討します。 資料を揃え、増額や特別費用の分担を求めます。
再婚・扶養家族の増加 新たな家計事情を資料化します。 子どもの生活保持義務が軽く扱われすぎていないか確認します。
自己破産による家計再建 借金返済が止まった後の実際の支払余力を整理します。 破産した事実だけで免責・減額になるわけではないことを確認します。

養育費や婚姻費用の目安は、裁判所が公表している算定表が参考にされます。算定表は、父母又は夫婦双方の収入、子どもの人数、子どもの年齢などをもとに標準的な目安を確認するものです。具体的な金額は、算定表だけで機械的に決まるのではなく、個別事情も踏まえて検討されます。

支払う側が自己破産をする場合でも、まずは現在の支払額を家計に組み込み、それでも無理がある場合に、減額調停などの正式な手続を検討する流れが安全です。請求する側も、滞納が長期化する前に、調停、差押え、財産開示、第三者からの情報取得などを検討しましょう。


差押え・公正証書がある場合の注意点

養育費や婚姻費用について、公正証書、調停調書、審判書、判決などがある場合、支払われないときに強制執行を検討できることがあります。特に養育費は、継続的な生活費であるため、給与や預貯金への差押えが問題になりやすいです。

一方で、相手が自己破産している場合は、破産手続の段階、差押えの対象、破産管財人の有無、破産財団に属する財産かどうかによって実務対応が変わります。すでに差押えが始まっている場合、破産申立てを受けた場合、免責決定後に回収する場合で、確認すべき事項が異なります。

  • 公正証書がある場合:強制執行認諾文言があるか、金額・支払日・期間が特定されているかを確認します。
  • 調停調書・審判書がある場合:未払い額を計算し、履行勧告や強制執行を検討します。
  • 勤務先が分かる場合:給与差押えの可能性を検討します。
  • 勤務先や口座が分からない場合:財産開示や第三者からの情報取得の利用を検討します。
  • 相手が破産手続中の場合:破産管財人や裁判所からの通知、配当の有無、免責後の回収可能性を確認します。

裁判所の案内では、養育費等が支払われない場合、給料や銀行預金等を差し押さえて回収する手続、財産開示手続、第三者からの情報取得手続、間接強制などが紹介されています。自己破産が絡む場合は、破産手続と家事・執行手続の両方を見ながら対応する必要があります。

差押えをする側も、される側も、書類の有無が重要です。公正証書、調停調書、審判書、判決、離婚協議書、支払履歴、LINEやメールでの支払約束、通帳の入出金履歴を整理しておきましょう。


自己破産前後にしてはいけない対応

養育費や婚姻費用は免責されないため、自己破産をしても無視してよいわけではありません。他方で、破産前後の対応を誤ると、破産手続や家族関係の紛争が複雑になることがあります。

避けるべき対応 問題点 安全な対応
破産するから支払わないと一方的に伝える 滞納が増え、差押えや家事事件につながります。 支払困難な理由を整理し、協議・調停を検討します。
滞納分を隠して申立てる 債権者漏れや虚偽説明の問題になります。 相手方、滞納額、取り決めを正確に申告します。
家族から借りて一括で支払う 新たな借入れや資金移動の説明が必要になります。 破産申立て前に弁護士へ相談します。
公正証書や調停調書を捨てる 支払額・滞納額・回収方法の確認が難しくなります。 全ての書類を保管し、コピーを相談時に持参します。
慰謝料や財産分与も同じだと決めつける 免責・非免責の判断を誤る可能性があります。 請求の名目と根拠を分けて整理します。

自己破産の目的は、生活を立て直すことです。養育費や婚姻費用が残る場合でも、ほかの借金を整理できれば、毎月の生活費と支払計画を作り直せることがあります。家族への影響全体を知りたい場合は、自己破産の家族への影響も確認してください。


弁護士に相談する前に準備する資料

養育費・婚姻費用がある自己破産相談では、借金の資料だけでなく、離婚・別居・養育費に関する資料も重要です。滞納額や将来の支払額が分からないと、破産後の家計再建の見通しを立てにくくなります。

  • 養育費・婚姻費用の取り決め資料:公正証書、調停調書、審判書、判決、離婚協議書、合意書を準備します。
  • 支払履歴:通帳、振込明細、現金払いの領収書、送金アプリの履歴を整理します。
  • 滞納額の一覧:月ごとに、請求額、支払額、未払い額を整理します。
  • 収入資料:給与明細、源泉徴収票、課税証明書、確定申告書、年金通知などを準備します。
  • 家計資料:家賃、光熱費、保険料、医療費、子ども関係費、税金などを整理します。
  • 差押え・督促に関する資料:差押命令、履行勧告、請求書、内容証明などを保管します。
  • 借金の一覧:貸金業者、銀行、カード会社、家族・知人への借入れを一覧化します。

相談時には、「養育費を支払う側か、請求する側か」「離婚前か離婚後か」「子どもの人数と年齢」「現在の収入」「滞納額」「差押えの有無」を簡単に説明できるようにしておくと、自己破産と家事手続の関係を整理しやすくなります。


よくある質問

自己破産をすると養育費の滞納分も消えますか?

原則として消えません。養育費は、子の監護に関する義務に基づく支払いであり、破産法上、免責の効力が及ばない非免責債権として扱われます。過去の滞納分がある場合は、免責決定後も支払義務が残る可能性が高いです。

自己破産後の将来分の養育費はどうなりますか?

将来発生する養育費は、破産前の借金として免責されるものではありません。破産後の生活費として、取り決めに従って支払い続ける必要があります。支払えない場合は、相手方との協議や家庭裁判所の減額調停を検討します。

婚姻費用も自己破産で免責されませんか?

婚姻費用も、婚姻から生ずる費用の分担義務に基づくものとして、原則として免責されません。別居中の生活費分担として発生した未払い婚姻費用は、破産後も支払義務が残ることがあります。

養育費を払えないときは勝手に減額してよいですか?

勝手に減額したり、支払いを止めたりするのは危険です。滞納が増え、給与や預貯金の差押えにつながることがあります。収入減少など事情の変更がある場合は、相手方との協議や養育費減額調停を検討しましょう。

慰謝料も養育費と同じように免責されませんか?

慰謝料は、養育費・婚姻費用とは違います。慰謝料が免責されるかどうかは、不法行為の内容、悪意、故意・重過失、生命・身体侵害の有無などによって判断されます。離婚慰謝料や不貞慰謝料だから必ず非免責になるとは限りません。

財産分与は自己破産でどうなりますか?

財産分与は、養育費や婚姻費用とは性質が異なります。清算的財産分与か、扶養的要素を含むか、破産手続の前後どちらで具体化したかなどにより検討が必要です。離婚と破産が近い時期に重なる場合は、個別に弁護士へ相談してください。

公正証書があれば相手が破産しても差押えできますか?

公正証書や調停調書などがあれば、未払い養育費について強制執行を検討できることがあります。ただし、相手が破産手続中の場合は、破産手続の段階や差押え対象によって対応が変わります。書類を持って弁護士へ相談してください。


まとめ

自己破産をしても、養育費・婚姻費用は原則として免責されません。過去の滞納分も、将来分も、破産後の生活再建の中で別途対応が必要です。

  • 養育費・婚姻費用は、扶養・生活保持の性質があるため、原則として非免責債権です。
  • 破産前の滞納分も、免責決定後に支払義務が残る可能性があります。
  • 破産後に発生する将来分は、破産で免責される借金ではなく、継続して支払う必要があります。
  • 支払えない場合は、自己判断で止めず、減額調停や支払方法の見直しを検討します。
  • 慰謝料・財産分与は、養育費・婚姻費用とは別の判断が必要です。

養育費や婚姻費用がある自己破産では、借金だけでなく、離婚・別居・子どもの生活に関する資料を整理することが重要です。支払う側は破産後の家計に養育費を組み込み、請求する側は公正証書や調停調書、支払履歴、差押えの可能性を確認しましょう。

坂尾陽弁護士

養育費や婚姻費用があると、自己破産後の生活再建は通常の借金整理より複雑になります。支払いを止める前、差押えを受ける前に、破産と家事手続の両方を整理して相談してください。

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